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シェイプ・オブ・ウォーターのpikaのレビュー・感想・評価

4.0
デル・トロのブレない姿勢に感動。時代を描きながら普遍的な人間の本質を真っ向から見せ、童話的な語り口で辛辣に世の中を風刺する。
まさに真骨頂と言えるドラマだが、ブレずに続けてきたがゆえの円熟した完成度が見事だし、一昔前のアメリカを舞台にしながらリアルタイムの問題に一石を投じる姿勢がストレートに胸を打つ。

寓話的というのは構成だけでなく演出にも響いていて、恋愛ドラマでありながらキャラクターに自分を投影して云々などの叙情性があるわけでも感情を刺激されるでもなく、偏ると盲目になってしまうってのを避けて、一歩引いた俯瞰で全体を見渡せる切り口が秀逸。

世の不条理と、それに対する純粋な人間的感情の精神的闘いを可視化したような、人と少し違うだけで区別されてしまう現実を、区別など知らぬ本能で生きている者に出会うことで「人間とはこうあるべきなのか」と説いているようで面白い。

画作りも音楽も演出も、映画であるという手段を最大限に利用した芸術作品としての存在感が圧巻で、追求してもリアルには絶対になり得ない作り物たる映画の全存在を肯定するような、オマージュだけではなく、演出などの映画を作る行動そのもので映画に対する愛を語りきるデル・トロの情熱に感動した。
幻想の中で二人が踊り出すシークエンスは「あ、そっか、役者が演じてたんだ!」と映画は人が作っているんだと思い出し、思い出したことで「そんな当たり前のことを忘れるくらい没頭してたんだ」と映画のパワーを改めて実感させられた。
ドラマ自体がそもそもファンタジックなロマンスであり、デル・トロのフィルモグラフィーを見直してもそうであるように、現実を包み隠さずストレートに描写しながらフィクションや虚構であるのならば、現実では見つけることが困難であっても、夢や希望や愛などの人間が絶対に失ってはいけない大切なものを映画を見る人たちに贈りたいというような、上手く言えないけどデル・トロの
深い想いと愛を感じる素敵な作品だった。

今作のために過去作見てみてホント良かった。私的デル・トロベスト。傑作!
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