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あゝ、荒野 後篇のkouのレビュー・感想・評価

あゝ、荒野 後篇(2017年製作の映画)
3.5
《荒野に生きる孤独》
寺山修司の長編小説「あゝ荒野」を岸善幸監督が映画化した作品の後編。前編よりも話は重く、青春映画的な要素は薄れる。が、人間ドラマとしてとても良くできていて、キャラクターの行く末を見守りたくなる作品になっていると思う。

前編を通したからということもあるのだが、それぞれのキャラクターの過去、そして背負っているものがわかっている分、より物語上の彼らに感情移入しやすくなる作りになっていると思う。また、前編だけではわからなかった、自殺や、震災の問題を、後編では1つのテーマに集約していっていた。

それは孤独、ということだ。「あゝ荒野」というタイトルの「荒野」、とは、この世界のことなのだ。そんな荒野に生きる、それぞれの人物が抱えた苦悩は、彼らを孤独に追い詰める。思いを吐き出しても吐き出しきれず、繋がろうとしても離れていってしまう。時に互いを傷つけ、そして孤独を強めてしまう。その中で健二は、ボクシングを通じて人とつながろうとした。

そんな健二のクライマックスに見入ってしまう。彼が孤独の果て、やっとつかんだもの、そしてそれ故に失っていくもの。多くの人間の因果ともいえる関係性の絡み、それらを集約したラストだったと思う。ヤン・イクチュンの演技が素晴らしく、本当に素晴らしい俳優でもあるのだなと思った。
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