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ボヘミアン・ラプソディのdm10foreverのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.8
【喪失感がもたらした歓喜】

これまで「QUEEN」で泣いたのは人生で3回。
1度目は、まさに「QUEEN L♥VE」の絶頂期に舞い込んだフレディのカミングアウト直後の訃報。
ホントにカミングアウト自体も衝撃的だったのに、訃報が報道されたのはその直ぐ後(翌日)だった。あの時は呆然としたまま涙だけが流れていた。

2度目は大学生の時、たまたま観た「ウエインズワールド」の1シーンで流れたボヘミアンラプソディに脳天を撃ち抜かれ、その強烈すぎるシーンにも圧倒されて、ただただ号泣。

そして3度目。フレディを失って、もうQUEENの曲は記憶と記録でしか触れることはないんだと心に言い聞かせていた92年。
「フレディマーキュリー・トリビュートコンサート」が開催されると知り「喜び半分、切なさ半分」。
フレディの声じゃなきゃやっぱりQUEENじゃないし・・・。
でも、ライブはもの凄い面々が参加したとんでもないものだった。ガンズが、デビッドボウイが、エルトンジョンが、スパイナルタップ(!!)が、ライザ・ミネリが、みんながフレディの為に集まりフレディの為に歌った。
そしてジョージマイケルが「Somebody to Love」を完璧に歌い上げた瞬間にそれまで我慢していた感情が止めきれなくなって大号泣。

この曲はQUEENの曲の中でも1,2を争うくらい好きな曲だった。だからこそ、これを完璧に歌える歌手は2度と現れないくらいに思っていたから。だから本当に泣いた。
(多分、フレディは今ここに降りたな)って思えるくらい凄かった。
そのパフォーマンスが凄すぎて、ファンの間で「ジョージマイケルを新生QUEENのヴォーカルに」って本気で議論されたくらい。確かメンバー達も否定的ではなかったはず。
・・・そんなジョージも今やお空の上へ・・・。

でも、それでも時間はやっぱり流れ続けていて、だけど忘れられないものって絶対あって、それは僕にとってはQUEENの名曲たちで・・・。

この映画はQUEEN誕生前夜から伝説のLIVEAID出演までの軌跡を綴ったもの。
実は作品に関しては個人的にも賛否両方が入り混じっているので、先に「否」から(笑)。
QUEEN自体が「メンバーは知らないけどQUEENという名前はかろうじて・・・でも曲は結構耳にしている」というレベルの方も含めれば、多分世界中全ての人が触れたことがあるといってもいいくらいのモンスターバンド。

そういう前提を織り込み済みとしても、バンドとしてのサクセス部分がちょっとあっさりしていたかな・・と。
恐らく鑑賞するのがディープなファンだけじゃないからという想定もあったんだろうけどね。印象としては「時間的制約や内容的制約も考えれば、ある意味『優等生』的な作品にまとまったな」という感じ。
当事のドキュメントなんかを見ても、もっと過激でシリアスな場面は何度もあったからね。

ただね・・・そういう若干の淡白さを吹っ飛ばすくらいの名作であることは間違いないと思います。
実話もの、しかもまだ皆の記憶に新しいものをやる時点でやっぱり気になるのは「ディテール」だったり、その「再現度」だったりするわけで、結構厳しい目で見ちゃうと思うんです。
特にフレディを演じたラミ・マレックは相当ハードルが高かっただろうと。
実際、CMの時点では、いや開始数分の間は「違う・・・フレディじゃない」っていう目で見ていました。でも、不思議なもんで見えてくるんです、フレディに。
もうちょっとガッシリしてたらな・・・ってくらいかな。
あと、ブライアンやロジャーはホントによく似てた。説明無しでも分かるくらい。
その中でもディーコンのあの優しい微笑み。
「細かすぎて~」レベルかもしれないけど、この再現度は涙ものでしたね。

それと!これは言わずには居られない!
レイ・フォスター(EMIの重役Roy Featherstoneをモデルにしたらしい)を演じていたのはなんとマイク・マイヤーズ!
彼の口から「車の中でガンガン頭を振れるような曲」って言いながらボヘミアンラプソディを頑なに否定するシーンは完全に「ウェインズワールド」に対するパロディであり愛に満ちたアンサーだよね。
最初はあれがマイク・マイヤーズとは気がつかなかったけど(笑)。
気がついた時は(うわぁ~~~)ってなりました。

LiveAidの映像は、それまで何度も見てきた映像だったけど、あのステージに立つまでの紆余曲折や個人的な心境、葛藤など、色んな背景で肉付けした上で見たあのシーンは圧巻でした。

ピアノの上に何気なく置かれたペプシやビールのコップの位置まで正確だし、フレディたちの細かい動きまで完コピです(太鼓判)。
で、前に観ていた時はあまり気にしていなかった「カメラに向かってキスの意味」や「ブライアンの驚いた表情の意味」がズド~~ンと飛び込んできて、もう涙を堪えるのに必死でしたが・・・・2曲目の「ラジオ・ガガ」のイントロの時点で完全に涙腺決壊。誰も居なかったら声出して泣いていたかも・・。

思えばオープニングが「Somebody to love」でエンディングが「Don’t Stop me now」っていうリストも完璧だし(彼らが普通のバンドだったら、物語の展開的にもきっと逆のリストになってただろうね!ラストにバラードみたいな)。
それに劇中で触れられる様々な名曲の誕生秘話(っていうほど掘り下げても居なかったけどね)もニヤニヤしてしまったし・・・。
はぁ・・・満足、満足。

個人的には限りなく5点満点に近い作品だし、つけてもいい作品。
ポリシー的に『今回観た映画よりも、次に観る映画はもっと楽しいかも』っていう期待を込めた意味で5点満点は付けない事にしているので、そういった意味でも点数以上に最大級の賛辞を送りたい一本ですね。

出来ればIMAXで観たかったです・・・。
(札幌は9月の地震の影響で唯一のIMAXが休館状態となっているため観れないのです。11月中に復旧予定ですが・・・)
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