LEMON

ボヘミアン・ラプソディのLEMONのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
4.3
ドキュメンタリーというか、一人の人間の希有な(?)人生をここまでじっくりと見ていていいのかというくらい一人の男の物語を堪能する映画であった。クイーンの話と思いきや、だいぶフレディ・マーキュリーに焦点を当てている。
フレディはクイーンとして誰も疑わない偉人レベルであるが、この映画は冒頭の素晴らしい映像も含め、フレディ自身のちょっとイケメンでないところも含め、僕らにももしかしたらあったかもしれない人生を想起さし、「フレディを見る」ことから「自分を(客観的に)見る」という視点を与えている。
そして映画自体一人の主人公の人生にフォーカスし感情移入することは良くあるが、決定的に違うのはやはり、見た目に加えて声・歌というものが彼の思いを我々に伝えてしまうということだ。そのことから一層「フレディを見ている」ということに繋がっている。たとえばそれはミュージカルとは違う印象である。歌が叫びがダイレクトに届くことに心が揺さぶられてしまうのだ。それはクイーン自体の楽曲が言うまでもなく素晴らしいということでもあるが、相乗効果でこれほどまでこの映画がヒットすることに対し、音楽の普遍的な偉大さを感じられざるを得ない。
エンドロールの口元を映した歌も含め、私は英語が苦手なので中身はチンプンカンプンなのに、もうね、声というか叫びというかその人唯一のものを聞きながら涙も出るしロッケンロールだと思った。

ところでこれは一人の映画であり、また家族ということを見つめ直す映画でもあった。家族(ここではバンドも含め)であるからこそ、喧嘩など山あり谷ありの連続で、一人で自分勝手に生活できることとは異なる次元の豊かさがあると独身の私なりに思った。
独身は楽でストレスも少ないけれど、家族でいることの素晴らしさや豊かさを感じる。もっとそっちに踏み込んでいないなら踏み込めよ、と言っているように。真剣に人とぶつかることのなんという豊かさよ。フレディを見ることで自分を見て、そして周りの人を感じた。普通に生きている人たちのロッケンロールを垣間見る。
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