こたつむり

リングのこたつむりのレビュー・感想・評価

リング(1998年製作の映画)
2.3
♪ 嵐の夜の波のように
  見えない何かにおびえて
  道の前で 迷い 立ち止まっている

愚息は初鑑賞。僕は再鑑賞。
…でしたが、うーん。
やっぱり面白いと思えない…。

何しろ、原作の方向性とは真逆のアレンジ。
じわりじわりと追い詰められる感覚と、自ら手を伸ばさざるを得ない状況が重なって出来る“湿っぽい閉塞感”。それが無くなっているのです。

代わりに在るのはお化け屋敷的な怖さ。
手に汗握る部分はあっても“襲われる”という恐怖に凝縮されているだけなので、折角《貞子》を飛び出させても、立体的な恐怖を感じません。

また、登場人物たちの造形も微妙なところ。
主人公たちの背景をギリギリまで省いているので、感情描写が突発的なのです。旅館で主人公が声を荒げたときは…“キレる大人”を見た気分でした。

そして、噴飯物が“呪いのビデオ”の変更。
映像化に伴って分かりやすくしていますが、原作にあった“本能に訴えかける恐怖”が完全に切り取られているのです。それゆえにビデオを元に推理する場面も杜撰になるわけで。うーん。全てが裏目…。

確かに《貞子》の造形を浸透させたのは功績。
白い服と顔が見えないほどの長髪というアイコン化は成功しました。しかし、彼女を軽薄に扱う風潮に導いた“罪”の部分もありますからね。《貞子》がプロ野球の始球式で投げる演出はバチが当たると思いますよ…。

まあ、そんなわけで。
日本のホラー映画の転換点として名を刻んだ作品…ですが、出来れば“テレビ版”の方をオススメしたいです。ちなみに某有名漫画家さんも同じ所感でした。やはり、シビレて憧れちゃいますね。

最後に余談として。
愚息に感想を聴いたら「最初は怖かったけど、どんどん怖くなくなった」と言うので「今晩は一人で眠れるね?」と返したら「無理ぃ」とベッドに潜り込んできました。それって理由を付けて一緒に寝たいだけじゃね?

寝相が悪いから、ガツンガツンと蹴られたんですけど。うう…。
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