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ミスター・ガラスのcrimsonのネタバレレビュー・内容・結末

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

先に結論から。
シャマラン監督最高傑作‼︎
泣いた泣いたぞ。


世間では評価がイマイチな『アンブレイカブル』ですが、僕は大好物でした。

スリラー映画?サスペンス映画?クライムムービー?かと思いきや、実はヒーローが如何にして誕生するのか、というテーマが描かれた紛れも無いアメコミヒーロー作品。
ヒーローの背負う悲哀とカタルシスに溢れたデビッド・ダン=ブルース・ウィリスの姿に「そうきたか‼︎」と感動を覚えて劇場を後にしたものの、周りの反応はイマイチだったあの無念感。

「やりたいこと、やろうとしてることは素晴らしいのに、時代がシャマランについてこれなかった名作」それが個人的な『アンブレイカブル』の評価です。

公開当時はサム・ライミ版スパイダーマンすらもまだ公開されてなかった。
今ではアヴェンジャーズだのD.Cだの、アメコミヒーロー映画が量産される時代ですが、当時はアメコミヒーロー映画なんて誰も見向きも、製作しようともしなかった。

バートン版バットマンもひと昔前の話だし、ニンジャ・タートルズやスポーンとかヘルボーイとかはアレですかが(笑)

そう考えると『アンブレイカブル』は『ダークマン』に続く、アメコミ映画の先駆けだったわけです。

『シックス・センス』というとんでもない傑作で映画監督デビューを果たしたM・ナイト・シャマラン監督。
しかし、デビュー作品以降、世間的にはその評価はイマイチ。
そしてわかったこと。
大作映画は彼には向いていない。

仕切り直した『ビジット』で復活の兆しを見せ、『スプリット』のラストで語られた『アンブレイカブル』の続編やりまっせ宣言。

『シックス・センス』の呪いはずっと彼を苦しめていたはず。その始まりこそが、まさに『アンブレイカブル』だったのに。
その19年振りの続編をやっちゃう?
しかも『スプリット』の後日談として?
今更ダンやイライジャを描くことに何の意義が?

せっかく『ビジット』以降シャマラニズムの良い配合変化が生まれつつあったのに...。

シャマランもmarvelやD.Cみたく、アメコミヒーロー主流の映画界に同調しちまったのか?
シャマラニズム・シネマティック・ユニバースなんて感じの大作バジェット作品として、シリーズを続けていきたいのか?



と、かなり不安な気持ちで『ミスターガラス』を観たわけですが...

結果は「お見事‼︎」としか言えないシャマラン最高傑作でした。




『アンブレイカブル』から19年振りの物語。
そして、『スプリット』からは2年振りの物語。
様々な要素が奇跡的に調和して、後付け設定であろう展開、それすらも神々しく見えました。



ビーストを演じたマカヴォイの演技は、前作より更に素晴らしく、その鬼気迫る多重人格の切り替えがもたらす威圧感や恐怖、ビーストの存在が母親からケビンを守るために生まれたもいう悲しみは圧倒的でした。だからこそ、それらがごちゃ混ぜになった闇から放たれる一筋の光。
ケビンが灯りを取り戻すシーンでは号泣してしまいました。
レインコートを着た寡黙なダンの勇姿には、バットマン以上の哀愁を感じるし、誰よりも壊れやすいイライジャが、悪の道に手を染めてまで証明しようとした狂気それすらも、『これは特別編じゃない、始まりの物語」と言い放つシーンで号泣してしまうのです。

タイトルが何故ガラス=イライジャなの?
と全く理解できないのも、ラスト10分で納得のオチに。

これは自分の可能性を信じることの大切さを描いた作品であり、ある種X-MENと同じテーマ。
自分らしさを愛しなさい。
そんな優しさに溢れたメッセージを、シャマラニスト歓喜のシャマラニズム鍋で煮込んだ濃厚な濃厚な作品。

アヴェンジャーズとかとアクションシーンを比べて「迫力がない」とか「スケールが小さい」とか言う輩もいますが、そこは論点じゃないと思います。比較対象する方がおかしな話。

個としての内なる戦いにスケールなんて関係ないし、この作品は観るもの全てを覚醒させる作品。

今回も時代がシャマランに追いついてない。例えそんな結果になろうとも、僕は『ミスターガラス』は紛れも無いヒーロー映画の傑作だと思うし、marvel天下のこの時代だからこそ、この作品を描くシャマランの男気を賞賛したいと思います。

でもね。パンフレット製作されてないなんて‼︎残念過ぎるのはその点だ‼︎
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