みなに嘘を真実だと思わせる それが選挙だ
3期目を狙うソウル市長。同じく3期目を狙う東京都知事はこの映画を見たのだろうか。実際にああいうこと言ってそう。なんせあんなデカい経歴詐称を人びとに大したことないと思わせちゃうんだから。まさに巨大なウソは真実に近くなる。民主主義が元々抱えている弱点だ。
いやー、政治とはほどほどに距離をとるべしという我が家の伝来の教えは正しかったんだな。食肉に売られる犬たちがその仲買人を見分けるという 一度沁み付いたにおいは取れないんだってさ 怖いね
かつてアル・パチーノも『訣別の街』で汚れた市長をやっていたが、叩き上げでのしあがったチェ・ミンシクの人間くさい市長が色々と名言ぽいことを言っては誠実さからどんどん離れていく姿。でも半径5メートルでは絶対に魅力溢れる人なんだよな。あの時計をあげるというのもこの手の人間の共通スタイル。
なんだかんだ久々に俳優を楽しめた作品でした。
Cast
チェ・ミンシク 難しい顔から一瞬で笑顔を見せる タバコがやめられない
カク・トウォン 偉そうな奴という概念を実体化した人 毎朝電車で激似の小学生がいる
シム・ウンギョン 『新聞記者』の時と同じような役だった
ムン・ソリ 政界入りの野心をのぞかせる 元NHK記者にいそう
ラ・ミラン 胸元チラリは有効なのか 市民ファーストってどこでもいるな
あの『アウトレイジ』のような食事会で大統領選を見据え何かとライバル意識を燃やしていたキム・ホンパ。彼は社長と呼ばれていたが韓国映画によく出てくるこの呼称は、師匠とか先輩とかに近いものなのか。敬称一つ、タメ口をきくことに執拗にこだわるという、これがザ儒教社会。強固なタテ社会がうかがえる。
そんな息苦しさとは対照的な女たち。彼女らはその能力だけを武器に独りで戦う。汚いものにも手を入れる覚悟はあるがギリギリの所で回避する。だがそれはどこまで可能なのか。自民党の女性議員なんか見ていると早くから名誉男性ポジションを取る奴しかいない。ミイラ取り問題は根が深い。
この作品、2017年春公開だから製作は2016年ぐらい。この時既に世論誘導のためITを総動員しているのが目を引く。日本じゃまだ Dappi の騒動とかももう少し後のことだ。
市長選のような直接選挙ではどうしてもポピュリズム政治家が強い。日本でももはやSNS選挙は空中戦ではなく主戦場となりつつある。さまざまな誘導、動員合戦のツールとなっている。
ドブ板がSNSという時代。結果、どうしても相手陣営への誹謗中傷になる。それも早とちりでわざと切り抜きを拡散させた側の非を攻撃材料にするなどと入り組んでいる。まやってることは泥試合なんでそこは乗せられない事が大事だ。
それに比べるとTV討論というのは超重要。日本には討論の文化がないせいで議論ができない。ヒートアップすると、逆に冷静さを欠いている、感情的だとみなされやすい。結果スクリプトを読み上げるだけのつまらないものに終始しがち。先日の米国の討論会を見ても生の姿が直接伝わりやすいというのは有権者にとっては大事な材料だ。
他にも色々と面白いシーンがあった。
憧れのCM界のレジェンドが議員の前で頭が上がらず、完全に無能扱いされて選対本部から去るところ
子どもの巫女? 占い師に アンタ大殺界だから で爆笑🤣
⇒https://www.youtube.com/watch?v=F0bI8r53QSg
あの焼肉サンチュ巻きは、あのかわいい細木かずのこに同じことをされて、涙目になってたことの意趣返しだったんだな。自分も幼少期から人から口にものを入れられるのを拒絶するきらいがあったが、前世でこういう目にあったのか?