ちろる

さらば青春の光のちろるのレビュー・感想・評価

さらば青春の光(1979年製作の映画)
3.6
60年代のイギリスの若者を描いた物語。
1973年のザ・フーによるロック・オペラ「四重人格」を原作とした作品とのことだが、その原作を残念ながら私はよく知らないけど、
モッズとロッカーズという方向性の違いから、幼なじみとの距離ができてしまう歪みと、危うい青春時代の崩壊が生々しく描かれている。
この作品を観るまでこの時代、不良少年の間にファッション性の違いによるこんな対立があるだなんてちっとも知らなかったので驚き。
ちなみにミュージシャンのスティングもモッズの若者として登場、主人公にとってもある意味要になる存在でここも見所。
鬱屈した日々を仲間と共にりアンフェタミンで飛んだり、スクーターで走ったり、喧嘩して過ごす日々が最高にいけてたと思った時代。
社会の規則に従って束縛されることがみっともないと思った時代、なんとか社会から逃げて仲間と暴れまくって酒飲んで一生暮らせると勘違いしていたその時はそんなに長くは続くはずはなく、まるで音を立てるようにジミーを作り上げてきたものが崩れていく・・・
ずっとイライラしていてただでさえキレやすいジミーが、女を横取りされ、憧れの人の見たくない姿を見て、家を追い出され、仕事もやめ、やり場のない怒りをぶつけた挙句、と孤独へのロードをぶっ放す姿はもう誰も止められない、このみっともないジミーのクライマックスこそこの作品の全てでもある。
女子校育ち、姉しかいない私にとってこの手の不良少年の青春は少し遠くの出来事なのだけど、二十歳の時に付き合った彼の実家の部屋の壁に、高校生の時に陥没させたという拳穴があって、恐らくあれが青春の苛立ちの形だったのだろうと思った。
だからこの時代のモッズやロッカーズな若者でなくても、特に男子にはこれを観て何かチクッと痛むものが少なからずあるのではないかと思う。
個人的には不良少年たちの暴れっぷりより、この時代のモッズカルチャーを堪能できたのが良かったかな。
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