Jun潤

L.A.コールドケースのJun潤のレビュー・感想・評価

L.A.コールドケース(2018年製作の映画)
3.5
2022.08.05

ポスターを見て気になった作品。
ジョニー・デップ主演。
1997年に起きた、MCのノトーリアス・B.I.G.暗殺事件を追い続ける刑事と、その刑事を追う記者が直面する事件の真相、なんていう歴史の闇に埋もれた真実を究明するなんとも涎が止まらないあらすじ。

1997年3月9日に発生した、ノトーリアス・B.I.G.、本名クリストファー・ウォレス、通称ビジーの襲撃事件が発生。
それから17年経っても捜査を続けていた刑事ラッセル・プールの元に、事件の真相を追う記者・ジャクソンが訪れる。
執念の取材から当時現場で何が起きていたのかを聞くことになったジャクソンは、ロス市警の汚職と黒人差別の現実を知ることとなる。

ノンフィクションなのかってくらい濃厚な刑事ドラマ。
「ノトーリアス・B.I.G.」と聞くとジョジョしか思い浮かばないくらいラップ界隈にも洋楽にも触れてこなかった僕でも、事件の概要が分かりやすいかつ、他のノンフィクションとはまた違った、歴史的な問題や今に繋がることを描写するのではなく、あくまでプールとジャクソン、事実を追う2人の男たちにフィーチャーしたストーリー。

今作はクライム・サスペンス、とりわけロス市警やヒップホップ・レコードレーベルであるデス・ロウの組織的腐敗に重点を置き、当時の人々の動きを、おそらく忠実に再現しつつも、一本の映画作品として、先が読めない、どんどん真相が明らかになっていく過程に目を離させない構成に仕上がっていました。

事件の真相が全くの闇の中、というわけではなく、確かな点と点を線で繋いでいく過程は存在していて、上からの圧力や数の暴力によって、真相はどんどん深みへ沈んでいく、沼に手を突っ込んでいるような感覚に陥りました。

恥ずかしながらジョニー・デップ出演作品はこれが3作品目。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のイメージが強く、長髪髭面が真っ先に浮かんでくるので、今作のスッキリしたイケオジな姿にはビックリしました。笑

しかし今作、何が良いってカメラワークと画角がとても良い。
いい意味でノンフィクションっぽくない、現実離れしたとても映画的な演者たちの表情、それを最大限に映し出す画角が、ドラマティックに演出されていました。

こういうビターエンドなノンフィクションにはある意味欠かせない、エンドロールで語られる登場人物たちのその後についてと現代社会の状況。
ノンフィクション作品としては描かれなければならない要素の一つなのですが、どうしても今作で登場人物たちが動いた結果は何も残っていないのか、彼らは何のために行動したのか、が分からなくなってしまうというのは、本当に胸糞悪く、でも悪い意味だけではなく、そんな苦々しさもまたこうした作品の魅力の一つなんだろうなと思いました。
Jun潤

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