モモモ

リバー・オブ・グラスのモモモのレビュー・感想・評価

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
4.2
拳銃を落とした警官の父。育児や家庭への愛は枯れて「この狭い世界で生涯を終えるのか」との感情を抱いているその警官に娘と祖母の家に住みうだつの上がらない日々を過ごす警官の銃を(間接的に)拾った男が出逢った事で起きる空虚な逃避行を70分台で描く「こんな田舎はもう嫌だが俺たちはこんな田舎からすら出る事ができないんだ」ロードムービーの傑作。
どこで拳銃を落としたのか検討もつかないし、本当に撃ち殺してしまったのか確認もしないし、盗んだレコードを売り捌く事すらできないし、ゴキブリも殺せないし、強盗もマトモに出来ない。できたのはコインランドリーからシャツを盗むくらいで、何も出来ないし、何も達成しない。
この閉鎖感、この先行きの無さ。
「特別な何かになりたい」「ここから出ていきたい」「こんな人生ではなかった筈だ」そんな感情は万国共通で、年代は問わないのだろう。
何も達成できず、この生活を捨てる事が出来ないと気づいた絶望。
自分は逃亡犯で追われているのだ、という特別な瞬間が、他人と違う人生を歩んでいるのだと、という愉悦。
その2つが弾けて混ざる最後の選択が妙に清々しい。
強盗に躊躇している間に、超絶手際の良い強盗に先を越され、店主には八つ当たりパンチを繰り出され、代金を払わずに商品だけ盗んでいくあのお粗末で見るに耐えないシーンが最高でしたね。
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