しゅう

ゴールデン・リバーのしゅうのレビュー・感想・評価

ゴールデン・リバー(2018年製作の映画)
4.4
字幕版を鑑賞。

フィルマークスのレビューだと"渋めの佳作"みたいな評価に落ち着いているみたいだが、自分的には今迄観てきた西部劇の中でも出色の傑作。

近年造られてきた西部劇を観て不満に思うのは、登場人物達が現代的な感覚や倫理観を持ち過ぎている処で、ともすれば単なる現代人のコスプレになってしまう。

対してこの映画では、人々は18世紀半ばのアメリカ西部の時代精神と倫理観の中でしっかり生きていて、その中で四人の男達が幸福と安寧、信頼と友情を探し求める物語が丁寧に紡がれる。

また、こちらの予想を半歩だけ裏切る展開も見事で、自分が感心したのはホアキン・フェニックス演じる弟のチャーリー。

平穏な暮らしを求める兄イーライに対して、酒浸りの荒れ果てた生活に馴染んでそれを変えようともしない弟チャーリー。普通ならこの兄弟の生き様のすれ違いが悲劇の種になる処だが、映画はそんなありきたりな予想を超える。

やがて紆余曲折の末に不思議と訪れた束の間の幸福な時間。それが喪われた後に号泣するチャーリーの姿に、安寧や友情に一番縁遠いと思われていた男が心の奥底ではそれを求めていた事に驚かされる。

更には、兄イーライを演じるジョン・C・ライリー萌え映画としても最高。

歯磨き、散髪、サンフランシスコの水洗トイレに歓喜等、武骨さを可愛らしさに変換した一挙手一投足が楽しくて、殺伐とした物語世界に華やぎとユーモアを加えている。
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