おたば

BPM ビート・パー・ミニットのおたばのレビュー・感想・評価

3.2
【新たな悲しみの連鎖を産まないために】

BPM

この単語をみて音楽をやってる身としては
「この映画は音楽映画である」という認識になってしまいましたが
そっすね、心拍数ってことすね。

実在したフランスのエイズに関する運動団体「ACT UP」
その団員である1人の若者がその命を費やすまでのお話です。

とは言ったものの、実際このショーンという若者が主役なのかどうか
そう捉えるのは作品を見ただけでは正直感じとれなくて
ショーンと恋仲になる若者が主役っぽい感じがしました。

むしろ主役というポジションがあったのかどうか。

クローズアップされる人物は確かにいて作品の主軸である人物が数人いるのはわかったけど
何よりACTUPの全員がこの作品のこのテーマの主人公なのでしょう。

彼らはエイズの苦しみを、恐怖を知りその感染抑止や治療開発、ひいては政治的、社会的な分野にまでアプローチをし続ける活動団体で

己の身もエイズに侵されながらその命が果てるまで戦い続ける素晴らしい団体だったと思わざるをえない

もちろん手法への是非はあるかもしれないけどそれでも同じ思いをする人が増えないように
自分が、仲間がこの苦しみから救えるように
時には過激に、時には対立し
負けずに生きている姿が印象に残ります。

何より印象に残ってしまったのは濡れ場。

そう、エイズといえば同性愛者間での感染というイメージは強いはず。

もちろん異性間でも片方が感染してればなりますけどね。

この作品のひとつの見せ場でもある濡れ場は男性対男性でしかも描写が結構生々しい。
怒りと言う作品で綾野剛と妻夫木くんの濡れ場がありましたが
あんなのは序の口で、少年漫画のパンチラお色気シーンを眺めてるような可愛いもんです(笑)

なので、抵抗ある人には抵抗ある作品だと思います。

ただ、風評被害ではないですが昨今ほどLGBTというものに理解がなかった時代

彼らももちろん「汚らしい存在」だと思われていたんでしょうね。
世間からは白い目で見られることもあり、エイズによって蝕まれていく肉体、死への恐怖、悲しみを抱きながらも
明るく強くいきるたくましさを感じました。

ドイツに行った時にピンクハウスと呼ばれる
同性愛者専用のアパートメントを通り過ぎたことがあります。
あの建物もいわばマジョリティとマイノリティを格別する為の壁だったのかな。って思うと
今あの建物はまだ現存するんだろうか、とちょっと思い出にも浸ってみました。

面白い作品ですが、パリ映画らしい雰囲気がありちょっと頑張って140分観続けたっていう感じでした。

おすすめ度は38点
おたば

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