このレビューはネタバレを含みます
自身が脆いのに簡単に他人を傷つけてしまう剥き出しの刃みたいな男。父から母への暴力、父の異常な躾、戦地での殺戮などがトラウマになり心が壊れてしまった。
心が壊れてしまった者のフワフワした感情が浮いては沈み、沈んでは浮く。主人公自身の不安定な心のあり方が、不穏な中にも安らぎ、安らぎの中にも不穏さがあるような、作品全体の雰囲気としてしっかりと伝わってきた。どこか危なっかしい。
水に沈む場面が安らぎに満ちていて、体が沈んでいき段々と死に近づいていく場面なのに晴れ晴れとした気持ちにさせられ、とても美しかった。
唐突にくる沈黙が重々しく響く。息が詰まるような沈黙。
少女が男へ「大丈夫だから」となだめる場面では、混沌としてぐちゃぐちゃだった状況や感情の中に何か光が刺したような気がして、救いなのか感動なのか自分でもよくわからない感情にさせられた。
トラウマがフラッシュバックする様子がこちらまで余裕がなくなるような緊迫感が伝わってきた。
だいぶ支離滅裂な羅列になってしまった。
大筋が理解できたように思えないが、全体的な雰囲気が脆くどこか危なっかしい感じがして、この男の行く末に何が待っているのか気になって最後まで目が離せなかった。