蛇らい

ラブレスの蛇らいのレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
3.7
ちょうど最近、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』という本を読んだ。その中で誰かに「あなたを愛している」ということができるなら、「あなたを通して、すべての人を、世界を、私自信を愛している」と言えるはずだ、という一文がある。つまり、愛に種類があるにせよ誰か一人だけしか愛せないということは、そこに愛は存在しないと言っている。

この映画の中に登場する男の子の両親も、新しいパートナーには愛情を向けているように見えるが、元パートナー、自分の親、息子、新しいパートナーの母親、他の人物に関してはとことん無関心。それを踏まえると、一見愛が存在しているように見える唯一の相手へも愛が存在していないことになる。

男の子を捜索する最中に愛ねえなあ、と思った中でも、帰ってきたらお尻をひっぱたいてやるとかいう頭のおかしいセリフが秀逸だった。自分達に愛がないことに気づけない人間の残酷さすら感じさせられた。

印象的だった、男の子が声を殺して泣くところも思い返すと腸が煮えくり返る。この親である前に人の資格もないような両親に、なにか仕打ちをしなければ終われないぞ監督よ、と思っていたところ、ラストカットのランニングマシーンで走る母親。皮肉めいた描写が会心の一撃。何とも言えない曇った母親の表情でやっと自分の中で、この映画に踏ん切りがついたと思う。

最後には愛を見つけられるのかな?と期待していたけど、最後の最後までラブレス!そのストイックさと、清々しいほどまでの愛への執着に、白旗を上げたい。
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