回想シーンでご飯3杯いける

ラッキーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ラッキー(2017年製作の映画)
3.7
老人を主人公に据えた映画が好きだ。真っ先に思い出すのがデヴィッド・リンチの「ストレイト・ストーリー」、他だとデニーロ主演の「みんな元気」や、「ネブラスカ」「アバウト・シュミット」等。これらの作品に共通するのは、老人の今を淡々と描く中で、彼らの人生を想像させる構成になっていること。回想シーンなどは無く、尺も短い。ベテラン俳優の演技力と優れた脚本が揃う事で成立する、とても贅沢な作品群と言えるだろう。

この「ラッキー」も正にその系譜の中にある作品だ。冒頭の彼の姿や、彼が住む街の光景を見て真っ先に思い浮かんだのが「美しい」という事。こんな皺だらけの老人を見て美しいだなんて可笑しいのだけれど、大自然の中で暮らす主人公の凛とした姿は、やはり美しいとしか言いようがない。周囲の人達との飄々とした会話の中から浮かび出すのは、彼の人柄。特にコンビニで働く女性との触れ合いが良かった。

「アイリッシュマン」の過去パートを冗長に感じてしまったのは、僕がそもそも本作のように簡潔な作品が好きだからなのだろう。人の人生は長いしドラマティックでもあるのだろうけど、それを映像作品としてまとめる時に必ずしも大河ドラマのように仕上げる必要はなく、僕自身も自分の人生を語り過ぎない老人になりたいという憧れがある。

あ、そう言えば本作は、冒頭で触れたデヴィッド・リンチが俳優として出演している作品でもある。