KATO

女王陛下のお気に入りのKATOのネタバレレビュー・内容・結末

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった!なんて、いびつなバランスによって成立している作品なの!
女同士の情愛やら嫉妬、野望が渦巻いていて、観ているとどんどん引き込まれていく。美しい衣装によって、その人間くさい部分が過度に装飾されているというか、強調されているというか。

アン王女の、王女然としていない感じ。子どもを失ったことによって、彼女は大人が持つべき理性を崩していったのか、それとも単純に持ち合わせていなかったのか。それを補うようにして、サラは隣にいることを選んだのだろうか。アン王女とサラの間にあったものは、間違いなく愛だけれど、そこに性欲が結びついてしまったがゆえに面倒なことになってしまったのかな。
性欲は満たそうと思えば、誰とでも満たすことができるもの。

アン王女の子どもっぽい嫉妬は、自身の愛を崩壊させていく。サラに気が付いてほしい、サラに愛されたい……。しかし、サラは愛しているからこそ、彼女を守るために仕事に没頭している。アン王女も分かっているはずなのに、甘い言葉を与えてくれるアビゲイルに心が傾いていく……。
アビゲイルの距離の詰め方に圧倒されてしまうが、アン王女とサラの間に横入りしようという浅はかさ。それは、サラがさった宮中での彼女の振る舞いに集約されている。
国のために動くのではなく、あくまで自分のため。犯罪だとされることも、自分がドレスを着るためだけに行っていく。あそこまで割り切れたら、いっそ清々しいかもしれない。

エマ・ストーンのドレス姿が、愛らしい絵画のよう。美しい肢体がクラシックなドレスにマッチしている。
今作のエマ・ストーンの思い切りの良さに何度か笑ってしまった。
「手込めね」といって、力を放るエマのシュールさ。そして、驚いたからといって思い切りビンタするあたりも最高。

アン王女演じるオリヴィア・コールマン、サラ演じるレイチェル・ワイズは言わずもがな。二人だけの世界が作られていて、アビゲイルには壊せないであろう、しかし危うい緊張感に満たされていた。オリヴィアの表情が愛らしく、しかしゾッとすることもあり、何度も反芻したくなる。

カメラによって、宮中に私自身も足を踏み入れたような気分に。雰囲気に既視感があると思ったら『籠の中の乙女』の監督だった。ラストの、あの儘ならなさ、喪失感、考え込ませる雰囲気……納得。
結局、救われたのはサラだったのでは。彼女の愛が無事に届かないことを知って、その運命を受け入れることにしたサラの表情が大変美しかった。
エマがここまで性悪を演じるのは珍しい。とても貴重で、その新鮮さがとても楽しかった。
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