なみき

ナチュラルウーマンのなみきのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
4.0
いきなり恋人を喪い、その死を悲しむ若い女性。ただそれだけの話なのに、恋人の遺族が、警察が、寄ってたかって彼女の名前を、性別を、そもそも人間なのかを問いただし、悲しむいとまさえ与えずに傷つけ続ける。女性でありながら女性として認められない、こんなほとんど安部公房風とさえいえる不条理が、主人公マリーナにとっては差し迫った現実であるし、同じ事情を抱える多くのひとにとってもそうなのでしょう。ただ普通と違う体をしているだけなのに。この映画は悲しいとか苦しいとかというより、ひたすら腹立たしいものとしてこの不条理を描く。主人公とともに腹をたてるなかで、いつのまにか主人公を自分自身のうちに取り込んでいる、そんな映画でした。
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