光はいつでもそこにある
だけど祈るだけではだめだ
2019 . 107 - 『Light of My Life』
謎の病気により女性が死滅してしまったディストピアな世界で他人との接触を避けて希望を探す父娘の話
ケイシー・アフレックの一応初監督作(容疑者ホアキンは除いてます)で主演を務めて脚本まで手掛ける
『ア・ゴースト・ストーリー』などのデヴィッド・ロウリー監督作のほとんどに出演してるケイシーは
この作品で光の映し方にこだわり、静かで冷たい質感や映像の行間をしっかりと捉えることを受け継いで、とても繊細で美しく父と娘の愛と成長を描きました
今作と似た作品で父娘の複雑な愛を描いた『足跡はかき消して』や、エンディングはリン・ラムジーの『ビューティフル・デイ』に通ずるものがあります
娘は父に聞いた「モラルと倫理の違いはなに?」
父は言う「モラルは善悪の考え方だが、倫理はそのモラルを確立させるために状況を見極めることだ」
「例えば、殺人はいけないこと、でもその相手が誰かを殺そうとしていたなら、相手を殺してもいいのか」
そうは言ってももし娘が誰かに襲われたら、きっとモラルや倫理なんて一瞬でなくなって、相手を殺める
子どもには正しいことだけを教えたい、でもこの世界はあまりにも複雑で、正解を答えれないかもしれない
それでも素晴らしいこと、美しいことを自分の言葉で伝えるよ、暗闇を光で照らすのが親の役目だから
生きていくための知識はあるけど、本当に大切なことはもうわからない、でも子どもはなぜか知っている
目の前のことに必死で、大切なことがあたりまえになった、殺人はダメ、盗みはダメ、ではその本質は?
子どもはそこだけを見つめて、感覚的に理解している
親は子どもの光だったはずなのに、命の始まりから今までずっと子どもの光に照らされてきたことに気づく
光は照らすだけじゃだめなんだ、神に祈るだけじゃだめなんだ、正しいことだけでは成り立たないんだ
光を、希望を、闇をも瞳で覗かないといけないんだよ
ケイシー・アフレックの優しい眼差しがすべてを語っています。あと娘役のアンナ・ピニョフスキちゃんの演技が凄ましく、原石見つけてしまった感がありました。この先やはり女性や子どもがなによりの希望。