青いむーみん

パーフェクト・レボリューションの青いむーみんのレビュー・感想・評価

4.2
 こりゃあ快作だ。障がい者に努力させて感動を呼ぶ、いや胸ぐら掴んで泣かせようとするようなコンテンツとは真逆の物語。確かに実在する人物が元ではあるけども実話を装ってゴニョゴニョやっていて、障がい者の現実を見せながらそれをファンタジーで無理くり昇天させるラストは逆に清々しくて笑わせてくれる。

 障がい者を扱うからってアレコレ神経質にならずに主役の二人を存分にフル活用した展開になっているから倫理を考えて眉間にシワを寄せる間もなくクマとミツを応援してしまう。もちろん恵理さんが観客の代表だ。彼女に浴びせかけられる言葉は我々のもとにゴリゴリと響く。
 「パーフェクト・レボリューション」というタイトルの意味こそがテーマ。なんだかバカっぽい語彙なのも当然。観りゃ分かる。しかし意義があり、価値のあるものだ。

 リリー・フランキー、清野菜名、小池栄子この三人が凄すぎるので画的につまらなくなることはない。リリーさんはキャラ的には彼とそう遠くない役どころなので肉体的な演技は大変だったろうが、内面的にはそれほど演技してないんじゃないだろうか。
 清野菜名はもう大爆発している。精神的に振り幅が大きい役なのでそれはそれは疲れたろうが、振り幅以上にやりすぎず、繊細さを消しながら演じた彼女は徹頭徹尾ミツだった。個人的に彼女に対してイメージと言えるほどの印象がなかったのもいい方に作用したかも。クマの家族が集まるシーンは必見。現実現実といいながら正面向かず下向いてる人達にミツのドリーミーな頭で人の芯をつく発言を叩きつけて、ついでにマグロの寿司も叩きつける(アドリブらしい)。その場では我々は叩きつけられる側だ。痺れちゃうよねぇ。
 小池栄子が上手いのは有名だが、今作は唸るほど上手いぞ。本当にいい役をもらったと思う。もっとも観客に近く、あの二人のそばで一番影響を受ける健常者を熱演。

 クラブで銀杏が流れるのはリアルじゃない。後から思えばその時点でファンタジーだったのかもな。実話を下地に作り上げる世界がファンタジックというパターンはこれからもっともっと洗練されていくジャンルかもしれない。