MikiMickle

希望のかなたのMikiMickleのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.5
大好きなアキ・カウリスマキ監督の新作‼‼
にして、引退宣言してしまったために最後の作品でもある。(後に「枯れ葉」を作ってくれた♡)
DVDを手にして、なんだか抱きしめたくなった。

フィンランド ヘルシンキの港で石炭に埋もれて密入した男カーリドは、難民として助けを求める。
シリア内戦の爆撃により家族を失った彼。唯一生き残った妹と共に密航しようとするが、道中ではぐれてしまう。
その後の壮絶な日々。長い長い道のり。
フィンランドに流れる様にたどり着いても差別と暴力は変わらなかった。
そんな彼の望みはただ一つ、妹を探し出す事。

一方、指輪を置いて酒浸りの妻のもとを去った中年男性ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)は、前職の資材を売り払い四苦八苦して、夢であったレストランを開くため、閑古鳥が鳴く店を無気力な従業員ごと買い取る。

そして出会う2人。



カウリスマキの何が好きかと言うと、
極めて少ないセリフの中にある何とも言えない独特の間。例えばカーリドの口から語られる悲惨な人生はからっとしていて端的で、だからこそ感じる事がある。セリフが少ないが故に得る情報も少ないけれど、想像を巡らして、感じるもの。察するもの。
思わずフフフと笑ってしまう力の抜ける可愛らしい辛烈なユーモアたちと、
陽気で切ない音楽と、カウリスマキ常連役者達の個性的なキャラクターと、言葉では表現できない雰囲気と、色合いと空気感と、一貫した無表情さと、

その中にある、無骨で不器用で純粋でおかしくて面白みのある人間の、人生の“本質”を 感じるから。
そして、全体的にある野暮ったさ。
可愛らしく、心から愛おしい。

カジノのシーンの緊迫感や、寿司のワサビの爆笑や、キュートな可愛すぎるワンちゃん(監督の愛犬ヴァルプ)などなども、アクセントとして効いており、やはりそれらも愛おしい。
誰も彼もが、愛おしい。

今作は『ル・アーヴルの靴磨き』に続く“移民三部作”の2作目。
独特のユーモアの中で訴える“移民”問題。
人の悪もきちんと描きつつ、芯にあるのは、カーリドの一途な思いと微かな希望にかける生命力と。それに感化されて彼を助ける人々は、彼によって逆に光を浴びる。
不寛容の世の中に光る一筋の光が導き出すものとは……

全て愛おしい。底辺にいるもの達へのカウリスマキの暖かい目とその不器用な表現は、彼にしか出せない宝物。
終わった後に、何分間もずっとじわじわとした涙と鼻水が止まらなくなった。心底、愛おしい映画。
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