Solaris8

希望のかなたのSolaris8のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.2
12/2 ユーロスペースで「希望のかなた」を観てきた。

この映画はシリア難民を題材にした映画だが、シリアの隣国はトルコで、東京国際映画祭でグランプリになった映画「グレイン」が、近未来のディストピア世界を描いたトルコの映画だった。自分はトルコのユルマズ・ギュネイ監督の「路」という映画がとても好きだった。その映画で仮出所を許された政治犯のグルド人がユートピアとして眺めていた鉄条網の国境の向こう側が、シリアだった。

あの映画から35年、映画「希望のかなた」では、シリア難民の人々が、トルコ側をユートピアとして眺め、トルコの難民キャンプからギリシャを経由して、フィンランドにも押し寄せる。映画の中でも難民が多く、フィンランド国内で職務質問が厳しい様子が描かれていたが、フィンランドも身分証明書で管理されるディストピア社会が始まっている。

映画では、そんなシリア難民の事を知る由もない、小さなレストランオーナーが全く別の生活をしていて、ある日突然、もう一人の主人公のシリア難民と出会う。最終的に、そのシリア難民はフィンランド国内の名もない人達の善意に救われる。北欧の隣国、スウェーデンの映画「幸せなひとりぼっち」でも、主人公の隣人がイスラム系だったが、キリスト教的な、汝の隣人を愛せよという精神が根づいているように思えて、安堵する。

映画は最初、セリフが少なく、感情の起伏を抑えた、冷たい雰囲気だったが、そんな孤独の中にも世界共通語の音楽や動物に癒されて、寡黙な人も実は、とても温かく、冷めたスープが徐々に、温められていくような心地良さが、とても良かった。

映画の中で、昔、「赤い鳥」や山本潤子さんが唄って、自分が好きな曲だった竹田の子守唄が流れてきた。京都の部落の歌で長く放送禁止になっていた曲である。全く知らない二人の主人公がフィンランドで出会ったように、世の中では、何か何処で繋がっているものだと気付かされる映画だった。
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