安堵霊タラコフスキー

希望のかなたの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.8
5年ぷりとなるカウリスマキの新作、ベルリン映画祭で発表されたときから気になっていた作品だけど、やっぱりカウリスマキ作品の雰囲気は最高と改めてしみじみと感じ入った

話としてはシリアからの移民や彼が働くことになるレストランの人々についての比較的シンプルな人情物語となっていたのだけど、その移民が冒頭で石炭らしき物の中から出てきたりレストランが思いつきで実行する拙い日本料理の真似事等、相変わらずカウリスマキらしいユーモアがふんだんに盛り込まれて他の監督にはない面白さがあったし、そのおかげで深刻な話かつハッピーエンドと断じれない展開になるにもかかわらず良い意味でほっこりとした気分にさせられるのは流石と言わざるを得ない

そしてこれまたカウリスマキ作品おなじみのバンド演奏シーンも、これまで以上に必要とは思えないシーンなのに、いやそうだからこそ作品を彩る絶妙なスパイスとなっていて、こういう無駄に思えるシーンが良い映画こそ本当に素晴らしいものなのではないかとすら思えるほどだったし、それは優れた表現という意味ではおそらく真理なのだろう

しかしこれは他の名作、例えばジョン・フォードの荒野の決闘等を見たときも思ったことだけど、体感時間があまりに短かったせいか幕切れが早すぎるように感じ、もっとこの作品世界に没頭したかったと良い意味で満ち足りない気持ちになってしまい、こう思うのはそれこそ作品が素晴らしいことの裏返しなのだとわかってはいてもやはりもっとカウリスマキ作品を味わいたいという心持ちで堪らなくなるから、どうか彼には5年置きと言わず短編でもいいからもっと映画を作ってほしいとひたすらに願う