ふじたけ

希望のかなたのふじたけのネタバレレビュー・内容・結末

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

いやーこれはいい映画を見ましたわ。過去のない男をもう一回見なきゃと思った。
カウリスマキは多分今の映画あんまり好きじゃないんだろうな。映画だけじゃなくて今の時代すら嫌いなんじゃないか。今の時代にもかかわらず、タイプライター出てきたり、ジュークボックスがあったりで色々とおかしい(フィンランドはそうなのかもしれんけど)彼の映画は時代を逆行している。ブレッソン映画のような押し殺した演技。役者は常に無表情。そして、手元のアップ。これまたブレッソンっぽい。それに編集のリズムもなんか似ているんだよな。テキパキと早いリズム。
だけどブレッソンと違う。この映画はコメディだから。
カメラとかはほぼ全部固定で派手な動きはないし、顔だけとかを写さず、背景を含めて人を小さく映し出す。この背景の作り方とかは小津の影響を受けてるんじゃないかな。無駄がない。背景のものから色まで全て整えられている。
てな感じなんだけど笑えるんだよな。大の大人が無表情で並んで立っているだけでもう面白いし、あの独特の間が笑える。
カメラはただ写すだだし、俳優は無表情で真面目に演じているのに、その場面に笑いが生まれる。ここに彼の人生観が表現されているんだと思う。とにかく笑えと。どんなことだって結局楽しまなきゃならん。世の中には優しい人がたくさんいて、絶対希望があるんだよと伝えようとしているんだと思う。
そんな彼の哲学を表すショットがあの寿司のくだりの後のショット。青く暗い背景の中一人ポツンと座るオーナー。だけどそこには一筋の光が差し込み彼を照らし出す。このショットにこの映画の全てが集約されている気がしてならない。どんな状況にでも光は差し込むのだ。
派手な演出しなくても面白い映画は撮れるんだな😵
ふじたけ

ふじたけ