ちろる

人魚のちろるのレビュー・感想・評価

人魚(1968年製作の映画)
3.8
ラウル・セルヴェ監督の短編観るのはこれで3作目。
先に観た2作(夜の蝶とハーピア)とは全く雰囲気が異なる一見可愛らしいお洒落なアニメーション。
まるで、お台場の奥から川崎の工業地帯を湾ごしに見渡すと良く観る動物を模倣したようなクレーンたちの風景をふと思いだす。
巨大なクレーンが怪物のようで、怪鳥も飛び交う。
夜の汽笛と、人魚の叫びと、サイレン・・・

死んだような海で釣りをする男が主人公?かと思いきや彼はただの私たちと同じ傍観者であった。
荒れた船に乗るスナフキンのような笛吹きと人魚の切ない恋物語でも始まるのかと期待していたが、まさかの人魚があんな残酷な目に遭うとは・・・
おとぎ話のようなロマンチックな雰囲気と、人間の残酷さのコントラストが実に不気味。
だからスナフキン男の最後のロマンティックな行動が少しズキズキさせた私の気持ちを慰めてくれた。
毒々しさと、優しさとの狭間が妙に心にこびりつく、そんな不思議なアニメーションでした。
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