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ハンターキラー 潜航せよのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ハンターキラー 潜航せよ(2018年製作の映画)
3.9
 凍えるような寒さのロシア・コラ半島沖、米海軍の原子力潜水艦「タンパ・ベイ」は突如、遭難した。アメリカ海軍のジョン・フィスク少将(コモン)は統合参謀本部議長チャールズ・ドネガン(ゲイリー・オールドマン)のプレッシャーを受けながら、攻撃型原子力潜水艦「ハンターキラー」ことアーカンソー号に救出を命ずる。アーカンソー号の艦長に抜擢されたジョー・グラス(ジェラルド・バトラー)は厳命を受け、直ちに乗組員を招集し、一路ロシアへと向かった。「タンパ・ベイ」の救出作戦に向かう最中、ロシア軍の魚雷により無残にも、「タンパ・ベイ」は大破させられる。国家安全保障局のジェイン・ノルクィスト(リンダ・カーデリーニ)は強硬姿勢を貫くドネガンに対し、ジョン・フィスク少将側に付くがそんな折、コラ半島へ向かったザカリン大統領(アレクサンドル・ディアチェンコ)の身に危険が起こる。今回のクーデターを主導したのは、軍部と密な関係にあるドミトリー・ドゥロフ(ミハイル・ゴア)国防相だった。コラ半島沖の一触即発の空気に対し、アメリカ大統領は力づくでの奪還を命令するが、特殊部隊とアーカンソー号による救出の案も捨てていなかった。

 まるで1980年代の冷戦構造末期のようなアメリカとロシアの一触即発の緊張感。統合参謀本部議長のチャールズ・ドネガンの判断はロシアへの強硬策に支配されているが、アーカンソー号の艦長ジョー・グラスは彼のやり方に全て従うことはない。海軍兵学校出身ではないが、過酷な戦闘地を回った経験は、人1人の命も粗末にしない。単なる潜水艦アクションものの雰囲気を帯びながら、今作が真に愉快なのは、ロシア原子力潜水艦艦長セルゲイ・アンドロポフ(ミカエル・ニクヴィスト)を人質に取ることにある。その瞬間、アメリカvsロシアという単純な冷戦構造は崩壊し、いかに世界を危険にさらすことなく、ザカリン大統領を救出するかに力を尽くす。副長を筆頭に部下たちはそんなジョー・グラス艦長の決断に反対しながら、彼には日の命を預かるリーダーとしての矜持があり、そのプロフェッショナルとしての誇りが、政敵であるはずのジョー・グラスとアンドロポフを結び付ける。国家の危機に着手する人間は文字通り、命を賭けた危険な任務につくが、命令を下すお上の人間たちは机上の理屈だけで汗も血も流すことはない。至極当たり前な事実に絶句しながらも、男たちの我慢と忍耐、地に足の着いた友情に涙する。なかなか気骨ある良作である。
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