ちか

THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティのちかのレビュー・感想・評価

3.6
この映画は、サーカス団でマジシャンの助手を務めるヒロイン「あき」が、妄想と現実の境界をさまよう姿を描く映画です。この映画の見所は撮り方やリズム感、そして色合いだと思います。恋人を無くし自分の中にぽっかりと空いた穴を埋める為に、ドラックやお酒を飲み、気持ちを紛らわし、自分自身も壊れていってしまう。冒頭18分ほどで曲とともにクラブで意識が朦朧としながら踊る主人公の映像は、とても妖艶で見惚れる。緑や赤などの照明の色合いが絶妙で、彼女の限界の精神状態がこの3分間でよく描かれています。始まりには強烈なインパクトを与えているが、その入りがこの映画の魅力でもあると思います。彼女をここまでにさせてしまった相手役の「カイト」の、今にも消えてしまいそうな儚さも、よく表現されていました。彼らが住む屋上で朝方に隣でアキが寝ている時に、カイトが自殺をしてしまう。二宮監督が描いたカイトの死の描写は、とても呆気なくて朝方の空の青さがカイトの持つ儚さを、忠実に再現された綺麗な映像だった。中盤で音楽に合わせながら彼の趣味だった写真が空から落ちてきて、その記憶が鮮明に蘇るシーンがとても美しく印象的でした。この映画は、映像表現がとても上手で、照明や撮影方法、音で主人公などの心情を訴えかけてくる。また、舞台セットにもこだわりがあり、パキッとした色の小物などを使用している為、幻想的な世界が忠実に再現されており、とても綺麗な映像でおすすめです。
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