真一

金子文子と朴烈/朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキストの真一のレビュー・感想・評価

4.0
 関東大震災当時の日本🇯🇵。「朝鮮人虐殺☠️の原因は朝鮮人🧒の側にある。それを内外に示さないと、日本は野蛮国家だと思われる」。当時の内務省🏢はこう考え、皇太子👑(後の昭和天皇)殺害を朝鮮人🧒が計画したとする大逆事件をでっち上げた。あの「朴烈(パク・ヨル)事件」だ。韓国🇰🇷映画である本作品🎬️は、朝鮮人🧒の目から見た「戦前の日本社会🇯🇵」をリアルに描いている。植民地支配されていた朝鮮半島から、大勢の人が内地🗾(今の日本領)へ出稼ぎに訪れ、差別を受けながらもたくましく生きていた歴史が、スクリーンに蘇ります。

 韓国人俳優🇰🇷が日本語🇯🇵を巧みに操り、実在した朝鮮人活動家や帝国政府の要人らを熱演。朴烈🧍‍♂️の同志で恋人の金子文子🧍‍♀️を演じたチェ・ヒソに至っては、なんと日本語なまりの朝鮮語を完璧に披露!日本人の役者さんかと思っていたので、心底驚いた。虐殺☠️を煽った水野錬太郎内務相👤を在日コリアン3世のキム・インウ、悩みながら朴を大逆罪で起訴する予審判事の立松懐清👨を若手のキム・ジュンハンが好演する。拍手を送りたい。同時に、かつての植民地支配💣️と向き合えない日本映画界🇯🇵の実情を、悲しく思います。
 
 舞台は、関東大震災🔥で混乱の極みにあった帝都・東京🗾。内務省🏢は「この機に乗じて朝鮮人と社会主義者に革命運動を起こされたら、日本は持たない」との危機感⚡を抱き、やられる前にやる戦法を編み出す。それが、内務省🏢による「朝鮮人🧒が井戸🚰に毒💀を入れた」デマの流布だった。民衆の「不逞鮮人」への恐怖心を煽り、民衆の手で朝鮮人を駆逐すれば、軍も官憲も手✋を汚さずに済む―。内務省🏢の狙いは、ここにあった。震災🔥で崩れる大正時代の町並み、緊張感あふれる閣僚会議👥の様子が生々しい。

 だが水野👤に誤算が生じる。殺傷件数が想像をはるかに超え、国際問題に発展しかねない事態に陥ってしまったのだ。虐殺☠️の発端になった「朝鮮人🧒が井戸🚰に毒💀を入れた」情報の裏付けは、もちろん取れない。内務省🏢自身が流したデマだからだ。「自衛行動に踏み切った大義名分を、何が何でも立証せねばならない」。こう考えた水野👤は、東京の朝鮮人や社会主義者の間で人気があった若きアナーキスト、朴烈🧍‍♂️を「皇太子爆殺計画」の首謀者に仕立て上げ、開かれた裁判を通じて死刑に処そうと画策する。一方の朴烈🧍‍♂️は「この裁判は世界に向け、朝鮮解放の正義を訴える絶好の機会になる。死刑判決こそ、天皇権力👑の非道性🔪を際立たせる最高のエンディングだ」と判断。互いの思惑が複雑に絡まる中、ついに「世紀の裁判」の幕が上がる―。

 自分の利益のために他民族を植民地支配し、こき使う。そして「奴らは私たちを憎んでいる。いつか襲われる」と恐怖する。デマを信じて「自衛行動」に参加する。事が起きた後は「私たちを敵視したのだから、自業自得だ」と他民族に責任を転嫁する。そんな日本🇯🇵の、列強👑の、帝国主義国家🏙️の本質を、本作品🎬️はよく描いている。登場する日本人は、必ずしもステロタイプの「冷酷な鬼」ばかりではない。実在人物を、史実に基づき、ほどよく再現していると感じた。

 ただ、朴烈🧍‍♂️と文子🧍‍♀️の恋愛シーンがやや退屈に感じた。物語の幹の部分に絡んでこないからだ。そもそも文子という存在自体が、登場回数の多さの割に、作品🎬️に影響を与えていない印象を受けた。この辺は減点要因⤵️になると思います。とは言え、まともな歴史教育が存在しないこの日本🇯🇵で育った私にとっては、貴重な作品でした。全体として良作だと思います。
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