しゅう

寝ても覚めてものしゅうのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.2
原作未読。

朝子と亮平の行動と選択には、納得出来ない或いは感情的に受け入れられない人も多いだろう。自分だって亮平の立場に置かれたなら、同じ様には振舞わない(振舞えない)に違いない。

ただこの映画では、朝子がどうしようもなく間違った選択をしてしまう事、亮平がそんな彼女をそれでも尚受け止めてしまう事、そこをこそ描きたかったらしい。

とにかく、主役二人が素晴らしい。

朝子役の唐田えりかさんは初めて観る女優さん。キラキラした美人でも色っぽいタイプでもないが、内に秘めた静かな情念とある種の頑なさが滲み出て、亮平が彼女に惹かれていく気持ちがわかる様な気がする。

そして麦/亮平の一人二役の東出昌大。

正直、東出くんは棒俳優だと思っていて、演じるとしたら寄生生物とかサイコパスしか嵌らないだろうと考えていた。

ところが、この映画では彼の持っている資質が、一人二役にもかかわらず上手く活かされている。

朝子の最初の恋人で序盤で失踪する自由人の麦は、笑顔を見せるほど心無い感じになる東出くんのサイコパス的な特質が存分に発揮されている。

対して、後に朝子と出会う亮平は笑顔が少なめで、そうするとその茫洋とした顔に何とも知れぬ寄る辺なさが漂う。そしてそんな彼が不器用に言葉を紡ぐ姿には、確かに人間的な誠実さが感じられる。

濱口竜介監督作品は初めてだが、決して上手い俳優とは思えない主役二人の資質を的確に活かして、恋愛関係となる男女の心の揺らぎへと昇華した演出力は見事。
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