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寝ても覚めてものnkkobaのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.2
日常の非連続性
今まで起こっていたことが次の瞬間も続くとは限らない。
例えば地震がそう。劇中、亮平と朝子が結ばれるのも突然日本を襲った東日本大震災である。
震災を経験した我々は否応にも震災前と後で別の世界を生きていると、世界が急に変異したと感じてしまう。
日常と非日常の分断は震災のように生活基盤に直結するものばかりではなくいたるところにある。
その一つが恋愛でありこの映画の主題である。



映画を見た多くの人は朝子の行動にショックを受けるだろう、しかし彼女はあくまでその時の自分自身の感情を大切にしてその瞬間に行動に移せる。こんな人は中々いない。
本当に思っていても、相手や周りのことを考えた結果行動に移せないのが普通だ。その点で彼女の行動力と性格は気高く強い。

濱口監督はパンフレットで
「恋愛において自分自身の感情を優先するということは、相手を満足させるばかりではなく、相手を傷つけ殺してしまう場合もある。」のようなことを述べている。
そのような危うさの中をどのようなバランス感覚で歩き続けるか、というのが恋愛をするということなのだろう。
その意味で、ラストシーンの長回しはとてつもなく美しく映った。
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