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トレインスポッティングのnkkobaのレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
4.0
イギリススコットランドのドラックジャンキーの若者達の話。


原作は同名小説。


ヘロイン中毒の主人公は自身の生活にやり場のない虚無感を常に感じている。そのためにドラッグに溺れ自堕落な生活を送るが、強盗で警察に捕まったことがきっかけでそれまでの生活を変えようと動き出す。


痛快なストーリー展開と、ドラッグトリップ中の映像表現が音楽と相まって非常にクール。


後半の、ドラッグ治療を始めてから今の生活から抜け出そうともがくユアンマクレガーの演技は迫真。彼の演技と目にフォーカスしたカメラワークが常にヒリヒリした緊張感のある画面を作り出すことに成功している。
「ここではないどこか」を志向するのは、自分を含めて若者にありがちな感情ではある。劇中の彼らは、特にスコットランドの田舎町で高校を出た後に働きもせず失業保険をもらいながらドラックを吸い、くすぶっている。


現代の、そして日本ならば「ここではないどこか」へと比較的簡単に旅立つことができる。電車網や道路、飛行機をうまく駆使すれば、大都会はもちろん離島や山奥など人里離れたところへだっていける。しかもいまならインターネットを用いることでそれよりもたやすく他人を追体験できる。
レントンは、「ここではないどこか、なにものか」など幻想に過ぎないということをドラッグを外的に絶たれることで自覚しはじめる。そして地元の仲間達との別れを意識し始める。


最後に4人でドラッグの取引をする際からレントンの顔は、彼らを見ていない。もっと別の未来を志向している。取引成功の打ち上げの際に噴出した感情は、皆が寝静まった後の部屋で行動を移される。
大金を手にした彼は、悪いことはやめて、普通の、つまらない、くりかえされる生活への切符を手にした。
そのあと彼がどうなったにせよ、一人で街を歩くレントンの顔は清々しいまでに晴れやかだ。
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