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寝ても覚めてものkassyのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.0
カンヌのコンペティションに出品された事で注目していた本作。やっと鑑賞。

朝子は麦という男性と恋に落ちる。しかし、彼は忽然と姿を消してしまう。その後朝子は東京へと移り住むが、ある日麦と瓜二つの亮平という男性と出会う。

痛みやせつなさやもどかしさがすごくよく表現されていて好きな作品だった。
前半は葛藤が伝わり、胸が何度もギュッとなる。
そして後半は逆の意味で胸がギュッとなる展開となる。

主役の朝子もどこか浮世離れしているが、麦が出てくると更に浮世離れした話になってしまうので不思議である。麦という人の浮世離れしているから、夢のようなフワフワと幻のような話となる。

そんな中、"あの事"と絡めた事は、この作品に非常な重要な意味をもたらしていると思う。
あの日は、日本に非日常をもたらした。
見るもの全てが、嘘みたいだった。
しかしあの非日常は逆に今ある自分たちの日常が実はとても尊いものであった事に気付かされた。
"あの土地"に行く事で、朝子はあの決断をしたのだと理解する。
夢から覚めた、現実がそこにあった。
あの一連の流れに、どこか駆け足感を感じてしまったのは少し残念だった。

朝子にどこかサイコ感を感じるが、亮平もまたサイコ感があるのだろう。と思わせる最後だった。
恋は衝動で人を狂わせ、理屈ではない。
しかし、愛は理性で恐ろしくても続いて行くものなのかもしれない。
川のように、とめどなく流れていく。

tofubeatsの音楽がめちゃくちゃ効いててとても良かった。劇伴も良かったし、主題歌のRIVERがすごく良い。
映画が終わって呆然としているところに、RIVERの歌詞がスッと耳に入ってきて、映画を優しく補完してくれる。沈みゆく私をそっとすくいあげて」と「二人の愛は流れる川のようだ」にハッとして改めて映画についてじっくりと考えさせてくれる。映画の為に作られた曲。相思相愛の相互関係。今時あまりない幸せな関係だ。
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