Kapporiya49

ビール・ストリートの恋人たちのKapporiya49のレビュー・感想・評価

5.0
観るべき理由が揃いに揃っているのに観てなかった作品。
とにかく素晴らしかった。
減点すべきポイントが何処にも無い!

バリー ジェンキンス監督の『ムーンライト』では青が印象的だったが、本作は最初のショットから、秋の色づいた葉と恋人2人の衣装の黄色が飛び込んでくる。それと緑色。2人が常に黄色と緑色に囲まれ、身に着けている。この2色が映える画作りゆえだと思うが、結果として茶色も映え、黒人の肌の色がとても美しく観える。汚いはずの部屋さえ温かみのある美しさで満たされている。

音楽も素晴らしかった。
わざわざレコードに針をかけるシーンが2回はあったと思うが、親密な関係にある恋人や家族がリラックスするためのジャズやR&B。
一方劇伴も素晴らしく、弦楽器によるゆったりムードを和らげる音楽だと思っていると、会話の内容に併せて不穏になっていく。

美しく、若者の甘く切ない恋愛を描いたドラマではあるが、原作者ジェイムズ ボールドウィンといえば強烈なタイトルのドキュメンタリー『私はあなたのニグロではない』で観られる演説と同様、憤懣たる人種差別への怒りと恐怖を描いた作品でもある。

怒りは観てりゃ誰だって腹綿煮えくり返る作品だが、本作で人種差別への恐怖を台詞と表情から体現したのが、ムショ帰りの役を演じたブライアン タイリー ヘンリー。
具体的にどんな恐ろしいことを警察にされ、ムショでどんな思いをしたのかは説明されない。しかし、彼が恐れていて二度とあんな「地獄の底」の思いをしたくないと心から思っていることが感じられる凄い演技だった。

他にもレジーナ キングが凄いとかレイプ被害者役の人が凄いとか、役者の演技の良さを言い出したらキリがないが、こういう作品にクレジット無しでサラッと良い芝居をするペドロ パスカルも小憎らしいなと思った。
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