ムー

スリー・ビルボードのムーのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
5.0
「怒りは怒りを来らす」
セリフとしても登場し、本作の象徴として描かれるテーマ
一方で、その怒りを抉りきった先に見えてくるのは、「愛は愛をもたらす」ということ
パッと目を引く赤い怒りと、暗闇の中に確かに存在する愛
それはまさに看板の表と裏

赤い看板、赤く燃える警察署、赤い花
暗闇で命を絶った署長、暗闇で手紙を読むディクソン、薄暗い看板の裏
警察署が炎を上げながら2つの色味が交わり、赤い看板は燃えて黒くなり、怒りと愛が入り混じる
この対比と調和の演出が本当にニクい
看板を貼り替えてからは表を全面的には映さず、最後に3枚の裏面のみを見せて終わる
スタートから実はゴールがすぐ裏に存在していたという非常に計算された作り
そして、怒りと愛の二極を超えた先を映画の外に持って行くことで、表と裏の2面では表せない部分を視聴者に委ねる余白の作り方も素敵

自分の中で完璧と呼べる映画
最初に見た時は、画面の中以上に自分の中で渦巻く感情の整理が付かずで、ひたすらに圧倒された
3回目にしてようやく、あれやこれやと好きなように考察できる状態になれたけど、またもやその作りに圧倒され
そして3回とも役者たちの凄みがかった演技に圧倒され続け…
まあなんというか、とにかくズルい映画

スタンド・バイ・ミーが大名作と呼ばれる由縁はあまり感じられてないけど、その映画に乗せる気持ちを語られると「ああ、なるほど」とその人なりの心の拠り所になってるんやと理解できる
自分にとってこの映画は、もしかしたらそのポジションになってくれるのかも
そう思わせてくれる素敵な幕引き
ムー

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