チャンミ

スリー・ビルボードのチャンミのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.2
オープニングの、ミズーリの風景に廃れた穴だらけのビルボード、に続く原題『Three Billboards outside Ebbing, Missouri』のうしろ3つの単語が痛切。
ミソジニー(女性蔑視)、ホワイトトラッシュ(そして言明されないけどイラク戦争からの帰還兵と戦時性暴力について)、性的マイノリティや人種に対する偏見に、自尊の得難さが生む排他性、が広大なのに人間関係の緊密な田舎町で絡まって、なんの解決ももたらされないのに生きるしかない、諦観としか言えない前進に圧倒される。

とりわけジェンダーをめぐって拮抗していたはずの者同士のうち、ある人物のパーソナリティに関して、さりげなさすぎて見落としてしまわれるとおもうが、マッチョイズム、ホモソーシャル、差別主義への傾倒と深く結びついている言及は、承認、呼びかけとして浄化として作用し、セクシュアリティをキーワードに、最後に思いもよらぬバディ感を生むという衝撃的展開をもたらす。
リアリティを基礎としながら、ステレオタイプなキャラクターや言動も盛り込まれるため、現実はそんな生易しくないだろうとおもわせておいて、「解決」を爽快に拒絶するファイナルカットに至ると説得力のある伏線として脈動する。
フィクションを信頼する強度に鍛え抜かれている脚本、その本を貫き通した演出の冴えを味わせてもらった。

壮絶なフランシス・マクドーマンドはもちろんすごいんだけど、サム・ロックウェルが目も当てられないほど愚かな白人警官像に、きちんとわびしさを含めていて、作品の奥行きを作っている。
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