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スリー・ビルボードのluのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.3
誰もが満身創痍。
どんな形であれ、努力をすることで目の前の現実に近づいていく。目の前で起きていることを一心に見つめる彼らだからこそ、知ることが出来たものがきっとある。
結果がどんな色に染まっていようと、今はただ動くしかない。そんな彼らは常に満身創痍で、必死で、喘ぎながらも追うことを辞めなかった。それを格好良いと呼べるのは、客観視してるからなのだろうか…?


結局、彼らのしてきたこと、やり方は、正しかったのか。報いはあるのか。間違いではなかったのか。救いはあるのか。それは全部、わからない。彼らからしたら、そんなの知ったこっちゃないのかもしれない。結果を待っているのは傍観者だけで、動き始めている彼らにはその瞬間、希望を捨てずに努力することが何より大事な事実。
だから、あの終わり方は彼らを象徴して描かれたものだったように感じました。

しかし、衝動的に突き進む彼らにはこだわりなど無いように見えました。実行に移すにも軸がある訳ではない、確実性も無いし正解などわからないし、その先に正しさを生み出せるかも本人たちはわかっていない。だけど、だからこそ強くあれたのかもしれません。怖いもの知らずとはまさに彼らのことですね。

いつだって映画の中の登場人物は招かれるようにラストへ走っています。ですが、彼らにはその道筋が感じられなかった。展開や感情の起伏が大袈裟でも軽薄でもなく、本当に生きている一人の人間のようでした。

似た境遇を持つ主人公は他の映画にもたくさんいますが、この映画はまた別物。何に置いて別物かというと、それはやはりどう生きるか。果たして彼らの歩む道は強く踏みしめていい道なのか、それとも脆く崩れゆくのか。それは彼らしか知らないし、わたしたちは知らなくて良いのだと思う。そもそも、そんなの関係ないのかもしれない。だけど、彼らは無敵じゃない。死ぬのは怖いし、辛いし、だから動かされるのだと思う。死んだって良いと思って動いてるんじゃない、死ぬことが怖いからこそ、動けているのだと。生きるために死の淵を選んでいるのが、彼らでした。


とても良い映画に出逢えました。特に音楽と場面展開の調和が素晴らしく、何度も涙ぐみました。重い空気の中美しくもあり、ただただリアリティを押し付けられる映画ではなくなっていました。
そしてミルドレッドを演じたフランシス・マグドーマンド、彼女の自然な演技にも引き込まれるばかりでした。あんなにも強さを感じさせるのに、誰の前でもない時は弱々しく眼を伏せては図らずも情を吐き出していました。
彼女は何も恐れていないわけじゃない、怯えや弱さを強さで必死に覆い被せているというのが随所から感じられました。それを繊細に表現出来ていたのが、とても素晴らしかったと思います。

役者さんたちが絶妙な方々ばかりで、とても良かったですね…ディクソンが特にお気に入りでした。憎ったらしさがあればあるほど、根に張っているものは大きく愛を渇望しているのかもしれません。

円盤が出ればまた観直したいですね、素敵な映画でした。
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