haru0625

スリー・ビルボードのharu0625のネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

『誰かを属性で判断すること』『一面的に他人を決めつけること』を拒否する意思が今の世の中には必要だと強く訴えかける映画でした。
登場人物の誰一人として、善玉と悪玉に割り振ることができず、それはそのまま私達の生きる世界のリアルな隣人の姿として見る者に跳ね返ってくる。何かを憎むとき、私達は誰かしらの善き人を巻き込むことは避けられず、彼らを傷付けずに済ませるのは絶対に不可能だというメッセージが随所に込められていました。
絶望とやるせなさの行き着く先で、誰しも目に付いた善を為さずにはいられないという、人間の善性に希望を持たせてくれる作品でもあります。
この映画の一番素晴らしい所は、決定的な行動を起こす際に、露悪的に開き直るでもなく、善を為す為にハードボイルドに振り切るでもなく、そのどちらを選ぶべきかの決断に敢えて猶予を持たせたエンディングを用意した所でしょう。
ミルドレッドにとっては一度は耐えた『怒り』、ディクソンにとっては、密かに愛していた署長にお前には必要ないと言付けられたはずの『銃』、それらを捨てきれずに手元に置いてしまっていても、同じ葛藤を抱えた2人には目的地までの間に自分とも相棒とも向き合う時間がたっぷりある。それ自体が2人にとって一種の大きな救いになっています。その先2人がどうしたかは、大して重要ではないのでしょう。
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