キナ

ブリグズビー・ベアのキナのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
2.8
特殊な立場の主人公だけど、理解されようとされなかろうと「僕はこれが好き!」と純粋に思い突っ走る姿がなんともコミカルで可愛い。
隔離された生活から広い世界に引き込まれた戸惑いもそこそこに、ブリグズビー・ベアにかける情熱の熱さに感心しつつ、ジェームスの25年間の世界には本当にこれだけしか無かったことを実感する。

優しい世界にほっこりして目頭が熱くなること数回、しかしその度にモヤモヤした感情が浮かんでしまった。
ズレた言動も可愛くおかしい主人公と、そのままの彼を受け止め包み込む周りの人間たちは良いし好きなんだけど、何だか違和感が拭えない。

誘拐だからと罪を罪として憎き悪きと頭ごなしに決めつける気は全くないけれど、「古い両親」の取った行動が到底理解できない。
愛情があったのは分かるし、バレないために隔離したいのも教育を受けさせるために工夫していたのも分かる。
真っ当な倫理観で正義を振りかざす訳でも正しい正しくないの判断ができる訳でもないのに、ただただ「気持ち悪いな」と思ってしまった。

例えば「古い両親」がどんな気持ちで育ててきたか、とかブリグズビー・ベアを作った経緯、その事情を知れればまた何か違ってくるかもしれないけど。
せっかくの機会もジェームスは特に興味がなく、映画作りの方が大事なようで…そのシーンにおけるジェームスとテッドのギャップはかなり面白かった。

とはいえ、好きなものに情熱をかけ自主映画を作るチームのドラマとしては良かったと思う。
検索するときの言葉遣いや手作り感溢れる撮影にグッとくる。
やり始めたら人一倍こだわりの強い元演劇部の刑事さんがとても好き。役者だなあ…
完成作もなんだか感慨深く観れた。

周りが本当に良い人ばかりで良かった。ジェームスが幸せであることが一番で、彼が向き合いたどり着いた答えを皆んなで楽しみ共有しているのがよく伝わってきた。
逆に良い人ばかりすぎて、生温くご都合主義的に見えてしまったのかな…
笑いも癒しも多くて良いのに、この映画を心から楽しめずハマれずモヤモヤしてしまった自分に一番ショックかも。
キナ

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