Solaris8

ゆらりのSolaris8のレビュー・感想・評価

ゆらり(2017年製作の映画)
4.0
石川県の能登島で民宿を営む女主人と、その母、その娘の3世代が紡ぐ家族の絆を現在、過去、未来を交錯させながら時間を超えて描くヒューマンファンタジー。

11/8は上映終了後、監督と渡辺いっけいさんの舞台挨拶があった。18:00から上映で、勤務後に観たので、最初の20分が観れず、現在編の終盤からの鑑賞になった。

現在編は、民宿を営む女主人(岡野真也)と女主人の娘、アルバイトの女性(萩原みのり)とアルバイトの女性の父(戸次重幸)の二つの物語が挿話されている。

未来編は女主人の娘が成長して、シングルマザー(内山理名)になり、息子と二人暮らしをするが、ある日、病気で入院し、別れた夫に息子を託す事になる。

過去編は、現在編の女主人が娘だった(岡野真也)時代に話が遡る。娘(岡野真也)は民宿の女主人の母(鶴田真由)との仲は気まずい関係だった。娘の友人二人が宿に遊びに来た日、父(渡辺いっけい)は娘の友人をもてなす為、得意な手品を見せようとするが、娘(岡野真也)は、このマジックとは別に、あるリモコンの不思議な力に気付く。その晩、娘が冷たく、あしらった母が急死してしまうが、その不思議な力を使う事で映画はファンタジーの世界になる。最後のシーンでシングルマザーになった娘(内山理名)が宿に泊まって母(岡野真也)と話をしていて、ねじれたメビウスの輪のような構造になっている。

過去編を観て、現在編の女主人はどんな想いで民宿を営み、我が子に、どんな思いを託していたのか振り返る事が出来、未来編を観て、現在編から何を受け継いできたのかを理解出来る、そんな映画なのかもしれない。主題歌も時空を越える感じが、映画に似合っていると思う。

石川県の能登島は自分も好きな場所で、能登島が在る七尾には有名な和倉温泉があり、能登島大橋が見える。七尾には俳優の仲代達矢さんで有名な能登演劇堂がある。仲代さんが亡くなった妻と一緒に訪れたという別所岳からは能登島と能登の海が一望できる。

先日、湊かなえ原作の映画「望郷」を観たが、舞台は因島で、因島も本土とは橋で繋がっている。「望郷」も二つの短編を家族が繋ぐ事で島に住む人々の映画になっていたが、バラバラの短編集がうまく噛み合うと雪崩のように多数が一斉に同じ方向に動き出し、映画が大きく膨らむような感じがする。

自分の父が生まれた町を舞台にした映画「真白の恋」を観て以来、地方発の映画を観るのを愉しみにしているが、「ゆらり」は舞台で上演されていた演劇だったそうなので、能登島という場所は、後付けの映画なのかもしれないが、小さな民宿の安らぎが心地良かった。渡辺いっけいさんが映画はお客さんが育てる時代と云ってSNSへの拡散を奨励していたが、地方が舞台の映画は応援したい。

11/11 観れなかった最初の部分を観る為、二回目を観てきたが、娘(内山理名)が問題のリモコンを触っている。映画の冒頭の能登島大橋や新緑の能登島の景色が民宿の家族の物語と調和して平仄がとれていた。
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