ただのすず

YARN 人生を彩る糸のただのすずのレビュー・感想・評価

YARN 人生を彩る糸(2016年製作の映画)
3.6
自分、家族の為に服を作る人は今どれくらいいるんだろう。
私も服は買うものであって、作るものではない。
でも日本もたった何百年前までは全ての母親は家族の為に毎日服を作った。糸や布は、人と共に一緒に生きて、人の為に変化してきたもの。
それをもう一度、思い出させてくる映画。

女性が細々と刺繍するだけのドキュメント、ではなかった。
子供達が飛び跳ねて遊ぶ巨大遊具。
真っ白な糸がまるで蠢く生き物のようなサーカス美術セット。
全身をカラフルに編み込まれ人種も容姿も関係なくなった人達。
足を、目の覚めるような青い糸で人魚の尾に変え、海に漕ぎ出していく。
ダイナミックなアートで見飽きない。

アーティストというと、何の絵を?と尋ねられる、
鍵編みだ、と答えるとダセェと笑われた。とか、
美しくて精密で芸術的であるのに、日常に根差していて実用的で女性が作るから評価が低い。芸術では性差など関係ないように思っていた。

埃をかぶって仕舞われていた祖母が編んだモチーフを、
自分がもう一度繋いで編み生まれ変わらせ、日の目を浴びる度に喜びを感じるという女性が素敵だった。
糸は人と人を繋げ、結び、しなやかに形を変え人を包み込む。
温かくて柔らかく色とりどりで観ていると元気になる。
日本人アーティストも登場して良かった。