けーはち

戦狼 ウルフ・オブ・ウォーのけーはちのレビュー・感想・評価

3.7
主人公(ウー・ジン)は人民解放軍《戦狼》を抜けアフリカ某国商船の用心棒に。実はかつての上官である妻を殺され、その仇敵を捜す身。そんな中、彼が身を置く国で政変が勃発。革命軍の裏には妻を殺したらしき欧州最強の傭兵(フランク・グリロ)が‼──『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』の続編、MCUのルッソ兄弟を監修に、ハリウッドのスタッフを招聘して製作され中国映画興収トップを塗り替えた大作アクション。

アフリカ某国のセットが妙に小綺麗でリアリティがないとか、疫病のくだりはストーリー上の存在意義が怪しいとか、細かいところで雑だというのは前作と同じだが、中国国内が舞台でないため当局の表現規制も比較的ユルく軍隊同士の戦闘は真に迫り、ハリウッド一線級の戦争映画のクォリティでのドンパチ賑やか、民間人もバンバン景気良く死んでくれて楽しい(?)。

主人公の無双はますます激化。海賊が出てきたら海に引きずり込んで縛り上げ、革命軍相手にはガンカタ、カーチェイスの嵐、弓を使わせれば『ランボー』の域に達し、おまけに戦車まで出して『フューリー』さながらの戦車戦。仇敵フランク・グリロとのタイマンでも全ての技で優勢、敵が暗器を使っても、かつての妻の生命を奪った凶弾を突き刺して退ける。とにかく痛快。

国外行動であるため中国人の生命が脅かされている確たる証拠を掴むまで軍は介入をできず、基本的には主人公の単独行動になるが、本作で戦列に加わる老兵&中国系工場の御曹司イキリお坊ちゃんが非常に良いキャラ。軍属でないから得られるキャラの膨らみというのが本作では光る。当然、軍の強さというのも、やはり中国の威を示すには必要なので、クライマックスでは軍が長距離ミサイルを撃ち込んで援護してくれる(アメリカ映画なら、空軍が空爆するところ)。

本作の舞台がアフリカ某国なのは、新たな海陸のシルクロードを築く「一帯一路」構想から中国がアフリカに多額の投資をしているためで、エンディングの前には中国国旗を手にアフリカ人の敬意を受けて凱旋する堂々たる主人公、中国国民へ向けた「あなたには強大な母国がついている‼」という力強いメッセージが映し出され、愛国の感涙にむせぶところだ。われわれ日本でもこれぐらい肯定感の高い愛国メッセージを出してくれてもいいと思う。それは無理だなぁ。