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モリーズ・ゲームのカノンのレビュー・感想・評価

モリーズ・ゲーム(2017年製作の映画)
5.0
『モリーズ・ゲーム』
アーロン・ソーキン氏の頭の中取って出し。
カメラワークに、カット割り、編集、音楽、スピードと情報量、嫌でも集中させられる。
個人的に、恐らく彼の感覚は言葉と音楽と音と視界が、明瞭なのにとても近い。

始まりの一音、そして画から、すべて彼の頭の中で見えている通りに、緻密に迎え入れられ、
例えば、心積もりなく、アクセル踏みっぱなしで練磨の運転で高速道路を走行されるような
透明な箱に入れられて崖を蹴り落されるような、
007もかくやという、オープニングに引きずり込まれる。
タイトル画で一息、これは映画だった、
アーロン・ソーキン氏の脚本で、そして監督作品だと座席に座り直させられる。

『ソーシャル・ネットワーク』『スティーブ・ジョブズ』を経ての彼の脚本である。
字幕を追うのがもったいない、本当にもったいない、
滴るような美を纏い、でもしなやかで聡慧を香らせた、ジェシカ・チャスティンの眼福といったら!
用意された衣装は60着!ああもう麗しい!!
弁護士役のイドリス・エルバとの画は、眼福の二乗。ゴージャスの二乗。演技も色気も二乗。

『見えざる女神の手』と、大きく分けて同じ箱に入る、
同系統の役・キャラクターなのではと懸念していたのだけど、
全く別の人間がスクリーンにいるので、安心して欲しいです。
これがまた、ジェシカさんが、
喋り方、声音(発音)、細やかな仕草、表情と
本人に寄せているのが、本当にすごい。

人間の美徳という孤高において、真の賢さ、高潔、意地、矜持
アーロン・ソーキン氏は、それらを女性をファクターに表現したかったのだと思う。
そして、回転の速い切れるユーモア。
会場から笑いの漏れることたびたび。いや本当に笑います。

かつてアーロン・ソーキン氏は、『スティーブ・ジョブズ』でも、父と娘を描いた。
前述と重なるけれど、『スティーブ・ジョブズ』を経ての彼の脚本である。
父と娘をこじらせて、大人になった女性(または長子)にもお勧めしたい。
父親役のケビン・コスナーがまた素晴らしいので。

それから、音楽は『スティーブ・ジョブズ』『コードネームU.N.C.L.E.』担当者です。
あの感覚がお好きな方も、たまらないかも。

最後に、大したネタバレではないとは思いますが、
ディーン・キースがベーグルに文句をつけるときの台詞(本人の英語の発言の単語)を
気をつけて聞いて記憶しておくのをお勧めします。

劇場で、集中して、アーロン・ソーキン氏の運転するドライブへ乗せられるのは最高です。
最後に見える景色は裏切らないはず。
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