カノン

どん底作家の人生に幸あれ!のカノンのレビュー・感想・評価

3.7
『どん底作家の人生に幸あれ!』(The Personal History of David Copperfield)
オンライン試写会にて鑑賞しました。ありがとうございます。
元々の本「デイヴィッド・コパフィールド」未読です。

幼少期の、小さな子供が虐げられる様子は堪えました。

ポリティカル・コレクトネスとしての配役と受け取りましたが、実直シリアスな物語の映画化ではなく、本人が講演する様子から繋がる演出や、小道具・衣装等も踏まえ舞台と思えば、おかしなことはありません。
またきっとそのように意識して作られたのではと思います。

それを踏まえ、贅沢な俳優陣の、ウザさと大げさ感割増の演技や、こちらもお伽噺のようにカラフルで眩しい広く抜ける贅を凝らした富裕と、陰気な黒や煙ったように灰色がかる煤けた灰色の狭苦しい貧乏や貧困の陰りとの、対比の衣装や小物や建物や背景も、目に楽しかったです。

上下の落差激しくジェットコースターのように駆け抜けてゆく中で、厳しく困難状況に負けずめげず腐らず投げ出さず、悲観する暇もなく、刺激的な周りの人間とズンズン進んで行く様子は、力強く、またこちらも元気づけられました。
本ではもっと削られた時間があったのだろうと推察しますが、エピソードと機微をぎゅっとできる限り詰め込んだのだろうと思います。

撮影時期は2018年、大変な時期の公開となりますが、映画館のスクリーンいっぱい夢のように没入して見たい作品ですね。

最後に大ファンのベン・ウィショーさんを久しぶりに作品で拝見できてうれしかったです。
スタイリングと役どころで、少しファンタスティックビーストのクリーデンスを思い出しました。
蛇のようにねっちっこく絡みついて、ルサンチマン溢れる卑屈さがエグかったです。(褒め言葉)
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