Inagaquilala

レディー・ガガ:Five Foot TwoのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

4.1
冒頭の映像が見事だ。宙吊りになったレディー・ガガをカメラは下から捉え、そのまま彼女が天空に向かって飛翔していく。第51回スーパーボウルのハーフタイムショーの一コマなのだが、これがいかにも象徴的に使われていて、ドキュメンタリーの最初から気分は高鳴る。そのスーパーボウルでのハーフタイムショーをクライマックスに置いて(とは言ってもカメラはその直前までを追うのだが)、そこに至るまでのレディー・ガガの、プライベート空間からクリエイティブの現場、最も多いのは傷んだからだのケアの場面かもしれないが、日常に密着したドキュメンタリーだ。

もちろん音楽の制作現場などにもカメラは立ち会うのだが、全体としてはレディー・ガガの内面にまで肉薄したヒューマン・ドキュメンタリーとなっている。マリブの自宅やニューヨークのアパートメントへとカメラは立ち入り、その間、彼女は常に発言し続けており、本音で語られるそれはかなり興味深い。先行アーティストであるマドンナへの歯に衣着せぬ言及やトランプ政権下のアメリカの現状についての憂慮など、すべてをさらけ出す彼女の小気味良さを感じてしまう。

会話している途中に、突然、楽になりたいということで上半身を脱ぎ半裸になるレディー・ガガ。それがとてもさりげなくナチュラルに映り、あたりまえの風景のように感じられ、いかにもレディー・ガガらしい場面だ。また、これがいちばんシーンとして多いのかもしれないが、いつもからだに変調をきたしているようで、ボディケアの場面がたびたび登場する。そこからは表現者としてのマックスを生きる彼女の日常の過酷さが伝わって来る。とにかく、これほどリアルタイムで対象に密着して、ひとりのアーティストを描いたドキュメンタリーにはなかなかお目にかかれない。Netflixオリジナルのドキュメンタリーだが、これを見るためだけに配信に加入しても満足はできると思う。
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