MasaichiYaguchi

点のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
3.4
「愚行録」で長編映画デビューを果たした石川慶監督がガールズバンドyonigeの楽曲「ワンルーム」をベースに、歌詞で描かれている世界観、物語から着想を得てオリジナル脚本を執筆し、メガホンをとった上映時間26分の短編映画は、高校時代に付き合っていた男女が再会したことで、過去と現在が重なって今という瞬間を生みだし、お互いがそれをじっくり見つめ合っていく物語を繊細に描いていく。
或る夏の日、父の他界後に実家の床屋を継いだ理容師の高志は、幼馴染で高校生の時に付き合っていた恋人・ともえと床屋の前で、14年ぶりに再会する。
結婚式を間近に控えたともえは、うなじの毛を剃ってほしいと頼み、高志は少し戸惑いながらも、ともえを店の中へ招き入れる。
2人は会っていなかった時間を埋めるように、少しづつ昔の話や今の話をし始めるのだが、そこに高志には電話が、そしてともえにはメールが届く。
やっと、うなじに取り掛かるところで彼女の携帯電話が激しく震え、止む無く中断して、店外で相手に応じて感情的になるともえ。
ショートフィルムなので、2人のプロフィールの詳細は描かれないが、それでも店内にあるものや、彼女に届いたメールや電話の内容から現在の状況が垣間見える。
本作を観ていると、新沼謙治さんの楽曲「ふるさとは今もかわらず」の歌詞を思い出す。

「君も 僕も あなたも ここで生まれた
ああ ふるさとは 今もかわらず

この町で あなたに出逢えて
本当に よかった」

「君も 僕も あなたも ここで育った
ああ ふるさとは 今もかわらず

ふるさと 未来へ 続け…」

ふるさとや、ふるさとにいる嘗て恋した人は、傷心の心を癒し、また明日への一歩を踏み出させてくれる、そんな思いを本作から感じました。