MasaichiYaguchi

のみとり侍のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

のみとり侍(2018年製作の映画)
3.4
阿部寛さん主演で、小松重男さんの短編小説集を鶴橋康夫さんの脚本&監督で映画化した本作は、江戸町民文化を背景に艶笑落語的に物語が展開していく。
阿部寛さん演じる主人公の小林寛之進はちょっとしたことで藩主の逆鱗に触れ、タイトルになっている「のみとり侍」に格下げされてしまう。
私は本作で初めて江戸時代のこの職業について知ったのだが、「蛇の道は蛇」とは言うが、この時代にも現代に通じるような裏稼業はあるものなんだと思う。
それにしても、元々実直でエリート藩士だった主人公が、前向きに、研究熱心に裏稼業に取り組む姿が見ていて可笑しい!
今迄の武士の生活から世俗に塗れた庶民の生活を送りながら、男女の綾や機微、そして人情に触れて徐々に人として成長する主人公。
本作の舞台は江戸中期の「田沼政治」の末期にあたるが、主人公は世の趨勢や時の権力者に振り回された犠牲者と言えるかもしれない。
だから、折角「のみとり屋」として腕を上げた主人公だが、老中・田沼意次の失脚により絶体絶命のピンチに陥っていく。
果たして主人公の運命は?
如何にも艶笑落語仕立ての映画らしい、現実離れはしているが、ホロッとするような「落ち」が待っています。