Inagaquilala

判決、ふたつの希望のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.2
レバノン映画は、自分の記憶では初めての観賞だ。1975年から始まる内戦でレバノンは国土が戦場となり、そのイメージばかりがあったので、映画が製作されていることさえ、認識できていなかった。しかし、この作品は、実に傑作だ。レバノン人とパレスチナ人のささいな諍いが、法廷に持ち込まれ、やがて国を揺るがす政治問題にも発展していく。いわゆる法廷劇なのだが、そのスリリングな展開と次第に明らかになっていく骨太のドラマが、実に巧みにつくられている。

裁判の推移とともに、レバノンという国が背負った悲劇や、登場人物たちの苛烈な人生が語られていくが、法廷外のシーンも印象深い。とくに裁判を争うレバノン人の男性とパレスチナ男性に転回点が訪れるシーンには、静かだが重みのある場面だ。ヒューマンドラマの演出に冴えが見られる。監督のジアド・ドゥエイリはレバノン生まれだが、少年時代に内戦を経験し、その後、映画を学ぶためにアメリカに留学。クエンティン・タランティーノ監督の作品にカメラアシスタントとして参加している。

つい先日、この国を舞台にした作品「ベイルート」を観たばかりだが、あちらはメイド・イン・アメリカ。こちらは、レバノン生まれのジアド・ドゥエイリ監督によって、レバノンとフランスの共同作品として、ベイルートで撮影された作品だ。「レバノン映画」としては、初めてアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた他、ベネチア国際映画祭では、主演のカエル・エル・バシャが最優秀男優賞に輝いている。観て損はない作品。
Inagaquilala

Inagaquilala