柊

判決、ふたつの希望の柊のレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.2
初めからパレスチナとイスラエルが絡んだ故の問題と予想して観ていたので、あからさまに片方だけが悪い訳ではないだろうと好意的に観ていたが、始まって6割がた進んでもトニーに共感する事は無かった。うーんどこから希望が見えてくるのか、辛抱に辛抱を重ね、間違いなく最後はっきりと希望につながりました。諦めないで集中してほんとよかった。久しぶりに結末の良さに痺れた。
始まりは些細な事だけど、背負っている物が複雑故に周囲の人間を飛び越えて、ベイルート中にとどまらず国をも巻き込む裁判になるなど人間の心理の複雑さに辟易する。トニーの奥さんやお父さんの言っている事が至極まともなのでまだトニー陣営を切り捨てる事は無かったけど、裁判により知られる必要もない事があからさまに晒される事により、それぞれのバックボーンがより明確になる過程は重いけど大切なステップだった。
どんなに大変で許しがたい事があったとしてもあらゆる困難を乗り越えて人が人と分かり合えると言う希望は、この中東に限らずどこの世界でも共通するはず。

知られたくなかった故郷の事が晒され、初めて故郷のバナナ畑を訪れて以後のトニーの顔付きが明らかに変わった。物凄く良い顔になっていて、役者の底力を見せられた。それ以降はとてもいい展開で心にずんずん響いてくる。

最後に考えた事。暴力は暴力を生むだけだという事実。外野が勝手に熱くなって煽られたように小競り合いを繰り返す様はとても悲しくて情けない。どこかで暴力の連鎖を断ち切らないと諍いは永遠の負のループになるのだろう。
やはり非武装、非暴力、戦争放棄。隣人を良く知る事何だな。
柊