映画のラストで主人公の車が高速道路上でエンコする。/
似たようなことが僕にもあった。
突然、動かなくなったのだ。
車、だったらまだよかったのだけれど、僕がだ。
どうやら、そこは登り坂の途中だったようで、ズルズルズルズル下がっていってしまう。
いつのまにか、ブレーキもハンドブレーキも効かなくなっていたようだ。
突然、仮面は剥がれ、隠しようのないポンコツ性が露わになった。
「剥きだしの生」ならぬ、「剥きだしのポンコツ性」だ。
それからというものは、いつ終わるともしれない『転落』だ。
ポンコツ頭を 叩いてみれば カランコロンと下駄の音。
『地を這う虫』の生だ。
カリンティ・フェレンツ『エペぺ』※なみの悪夢だ。/
※ カリンティ・フェレンツ『エペぺ』:
ある日突然、言葉の通じない国に迷い込んでしまった言語学者ブダイの話。/
なにしろ一車線の高速道路上なので、はた迷惑この上ない。
同乗者の彼女も降りて押さざるを得ない。
そんなわけで、僕も同乗者の細腕に押されて、やっとここまでたどり着いたのだ。
何処に?
もちろん、夏目漱石『門』の崖下の家にだ…
なんだ、夢か。
どうやら、映画を観ながら寝てしまったようだ。
またしても、Tシャツに涎の地図ができている。
とはいえ、夢見心地はそう悪くなかった。