うえの

スパイダーマン:ファー・フロム・ホームのうえののレビュー・感想・評価

4.6
サノス軍とアベンジャーズによる最終決戦から8カ月。
「指パッチン」の生存者と帰還者との間に5年の歳月の差が生じたまま、ミッドタウン高校はヨーロッパ研修旅行を迎え、スパイダーマンことピーターパーカーは想いを寄せるMJへの告白を決意していた。
しかしヴェネツィアに突如現れた水で出来た巨大な怪物と宙を舞い魔法のようなパワーで怪物に応戦する謎の男、ミステリオことクエンティンベック、さらにS.H.I.E.L.Dの元長官のニックフューリーによりピーターは再び戦いの中に巻き込まれてしまう。
最高の夏休みを謳歌しようとしていたピーターが新たな敵や仲間、そして亡き師トニースタークの後継者としての責務に苛まれる姿を描いたスパイダーマンシリーズ第2作目、MCUシリーズ第23作目にしてフェイズ3最後の作品、そして『アイアンマン』より過去23作品紡がれてきた物語、「インフィニティサーガ」の締めくくりにあたる作品。

まず全世界のオタクの涙腺を決壊させた前作『アベンジャーズ/エンドゲーム』からたった2カ月ほどのスパンで公開された本作に学生の研修旅行というニヤニヤイベントを持ってくるふり幅の広さに驚いた笑。
『アベンジャーズ/インフィニティウォー』から2年超、期待と同時に漂っていた作品内における絶望感を前作で払拭し、今作で新たな物語の最初にそういった楽しい舞台を持ってくるという大胆な発想は様々な監督陣により描かれるMCUならではの強みだと感じた。

シリーズ前作からそこまでそんな雰囲気は感じなかったが、すでにピーターはMJに夢中のようで、研修旅行の中でいかに彼女の近くにいれるかばかりを考えていて、つまり全編通して死ぬほどむずがゆい(誉め言葉)展開が続くが、そんなことどうでもいいレベルに今作のMJが魅力的だ。

HCでのラストで実はMJであったことが発覚した為、前作はあまりヒロインらしい演出が無く終始ジト目で皮肉ばかり吐くシニカルでクールなキャラだったのに対して、今作は冒頭からピーターに興味津々なことが見え見えで、オペラ鑑賞でピーターが隣の席にと誘ってくれたことを喜んだり、真夜中のデートのお誘いに嬉しそうに応じたりとベースのキャラはそのままかもしれないが、表情豊かなで魅力的な年ごろの女の子を見事に演じ、『グレイテストショーマン』まで気づかなかったゼンデイヤの美貌も相まって、気付いたら彼女に夢中になっている自分がいた笑。
2017年のHCのツンから2019年の今作のデレの2年越しのツンデレにこんなにヤラれるとは思っていなかった笑。

そして今作のヴィランにはクエンティンベックことミステリオ。
自身は別次元の「アース833」からやってきて、この次元の「アース616」の世界に現れるであろうエレメンタルズという4体の怪物を倒すためにやってきたと告げ、S.H.I.E.L.Dを味方につけたり、トニーの面影をピーターに感じさせたりと本当に別次元のスーパーヒーローのような姿を見せつけたのもつかの間、トニーの遺品である人工知能「E.D.I.T.H.」を手にした途端、悪の本性を見せ始める。
演じるのは名優ジェイクギレンホール。
あまりこの手のエンタメ作品に出演しない演技派だが、自らの能力をコケにしたトニースタークへの復讐といわんばかりに怒りに震え、巧妙な罠を仕掛けていくまさに魔術師のような役柄が驚くほど似合う。
予告編に始まり鑑賞中盤に差し掛かるまで、実は本当に善人なのではないかと信じたくなるほどの人格者を演じたのちのバーでの大盛り上がりで、裏切られた気分半分、とうとう本性出したと同じくらい盛り上がる気持ち半分とどちらの側においても楽しませてくれた笑。

本作がMCUフェイズ3最後の作品ということでラストに至るまで気になるシーンが大いに描かれていた。

まずサノスの襲来を経験した世界において、マルチバースの可能性を示唆したことはすごい手腕だと感じた。
何もかもがありうる世界と人類は理解したため(特にアベンジャーズの面々は)、複数の次元が存在しうることをすんなり受け入れていた。
この考えはのちのMCUに大きく影響するだろうし、公開間際に噂に挙がっていた歴代スパイディキャスト総出演で3大スパイダーマンの競演も拝めるかもしれない笑(絶対無理)

また終始スクラル人タロスたちの化けた姿だったニックフューリーを描いたラスト。
最初は単純にバカンスに行ってました的な小ネタエンドかと思っていたが、フューリーがいる場所はよく見れば宇宙空間のようにも見える為、今後の物語の舞台が地球を飛び出した話になる可能性もある示唆しており、物語をいくらでも膨らませることができそうな演出にも思えた。

そして覚醒を見せ始めたピーターのスパイダーセンスの片鱗。
無印やアメスパでも言及はされてこず、単純に勘が働くだけの能力と描かれていたと思うが、終盤の渡り廊下のような研ぎ澄まされた描写を観てしまうとめちゃくちゃかっこいいと感じ、もっと上があるのではないかとワクワクした。
ピーター自体10代の少年ということもあり、今後の成長も期待できる発展途上な存在といった表現もされていて、その点も熱かった。

ラストの衝撃的な展開も含め、早くもフェイズ4が気になるところ。
そしてラストのサプライズで叫び声を挙げそうになった人は多いはず笑。
早速のマルチバースか!?笑

最後に今作で一番好きな点がHC時にあれだけピーターをうっとうしく思っていたハッピーがピーターからの電話一本でニューヨークからオランダに駆けつけてくれるシーンが大好きだ笑。
今作でさらに顕著になったが、トニーはもちろん、ハッピーとも、さらに言えばニックフューリーとも親子関係のように見えるピーターの息子力は一体何なんだろう笑。

2019年06月29日(土)1回目@MOVIXさいたま Dolby Cinema
2019年07月20日(土)2回目@MOVIXさいたま Dolby Cinema
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