TAK44マグナム

レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.5
クジラを見たかっただけなのに!

国名からして寒そうな国、アイスランドからやってきた寒々しいスラッシャーホラー。
日本からは裕木奈江も何故か参戦!

ホエールウォッチングに出発した、婚約者を亡くして1人で新婚旅行に来た女性や酔っぱらいのフランス人、遅刻女子、黒人男性、熟女トリオ、そして日本人夫婦とその秘書?のメガネ女子(裕木奈江)。
しかし、船長(「悪魔のいけにえ」のオリジナルレザーフェイスであるガンナー・ハンセン!)を事故で失い、すわ漂流か!と困っているところにボートで近づいてきた男。 
「助かった〜」と、男に連れられて大きな捕鯨船に行くと、そのには男のママンと弟がいました。
黒人男性が様子を訝しがっていると、なんと弟が熟女のひとりをいきなり惨殺したじゃありませんか!
驚いた一行は散り散りになって逃げ出します!
なんとまあ!その家族は、捕鯨禁止のために仕事もままならず、その怒りの矛先をホエールウォッチングに来るような外国人にむけているキチガイ一家だったのです!
逃げ場の無い海の真ん中で、狂気のサバイバルが開幕DEATH!


どうにも評判が芳しくない本作。
それも頷けるのですが、実際に観てみるとそこまで酷い出来でもないような気もしました。
確かに洗練されていないし、脚本も雑というか何というか。
登場人物が唐突におかしくなったり、肝心のキチガイ一家が頭悪すぎて弱い(苦笑)。これでよく今まで誰にも犯行がバレなかったもんです。
お話の焦点もボケボケでして、捕鯨業者とホエールウォッチャーの対立というテーマがあるのかと思いきや、そんなの全然関係ない。
そもそも、なんで矛先がホエールウォッチャーなんだろうか?
シーシェパードとか自然保護活動こそ対象だと思うのですが。
また、途中から裕木奈江演じるエンドウの視点に分離するのも面白いんですけど、展開が急だし、お話の根幹がブレブレになっちゃってます。
また、一部をのぞいてマトモな人間が出てこないのも、普通に観るぶんにはストレスがたまるでしょうね。
助手はなんで客をおいて自分だけ行っちゃうんだよ?とか、遅刻女子の友人は、ちゃんと話を信じてやれよ!とか、誰もがイライラすることでしょう。
黒人男性の「おれは◯◯なんだ」というカミングアウトには笑えましたが・・・(笑)。
他にも、せっかくのガンナー・ハンセンがよもやの無駄使いで終わってしまったり(チェーンソー持って暴れるべき)、捕鯨用の銛がぶっ刺さるところを見たかったのによく分からない、などなど残念な部分がたくさんあります。
それでも、夜中に鑑賞したのに全く眠くならなかったのだから、個人的には大変楽しめました。
なので、無謀かもしれませんが、すこし擁護にチャレンジしてみようかと思います!

まず、どこが面白かったのかと言うとですね。
前述しましたが、登場人物がオカシイという点。
基本的に人種差別主義者が多いし、被害者側も性根の腐った感がすごい!
途中で唐突にキャラが変わるのも普通だったりします(苦笑)。
誰よりも驚くほど豹変するのが、誰であろう裕木奈江!
ただの雇われ秘書かと思いきや、何の説明もないまま、まるで殺し屋の如く暗躍しだすのです!
突然、冷静沈着に即席爆弾を作成、雇い主であるはずの奥様にそれを持たせ、敵の殺人ババアと相討ちにさせてニンマリします!
その後もひとり(+酔っぱらい)で逃げるのに成功し、そこからの超展開にもうビックリ仰天!
どうして裕木奈江がそんなに最凶なのか?!
キチガイ一家より間違いなくドイヒーですよ、裕木奈江!

次に、ゴア描写が割とちゃんと作ってあったのも良かったですね。
アイスランド映画ということもあってそんなに期待していなかったから余計に好評価なのかもしれませんが、頭部破壊や首チョンパもあるし、最低限のグロリンチョは装備されておりました。
効果音とかにも気を使っているらしいし、それなりの気合をもってホラー映画製作に臨んでいるのは伝わってきましたよ。
思い返せば、キチガイたちの死に様のほうがより酷いってのは作り手側の良心のあらわれ?なのかもしれませんし、そんなの関係ないのかもしれません。

更には付け加えるなら、冒頭のクジラ解体がグロい!とか、いちおうオッパイも出る!とか、最後の最後にまさかのアニマルパニック映画になってしまう!とか、割り箸は最強の武器!とか、どうしてそうなるのかサッパリ理解できない予想外のサービス提供ぶりに、たっぷりとエンジョイさせてもらいましたよ!

・・・・・とはいえ、ここまで持ち上げてみたものの、やっぱり雑なんだよなあ〜。もったいないぐらい。
設定は悪くないし、演者も頑張ってるし、何がいけないのかといえば、レールから外れた列車のように落ち着かない話の運び方がフラフラしていてダメなのではなかろうか。
例えば、自分たちの庭であるはずの船なのに後手後手にまわるキチガイ一家は、いくらなんでもアホすぎでしょう。
パワーバランスがおかしいので、最初から逆襲されている印象を受けます。これでもし、エンドウというオモシロキャラが居なかったら、殺す側が殺されるだけの珍品で終わってる所ですよ。

でも、ゴマンと存在する、本当に救いようがないぐらいつまらないホラー映画(どれとは言いませんが・・・)と比べればマシというか。
見方をかえて「こいつはどうして突然ビッチ化するんだ!?」とか「日本語を舐めとんのか!」などとツッコミを楽しむようにすれば、ヘンテコだけど面白い映画と言えるでしょう!
世の中にはそんな楽しみ方も出来ない、頭の固い映画もたくさん転がってますから。

皮肉の効いたラストシーンもセンスあると思うんですけどね。
裕木奈江だけに、ポケベルが鳴らなかったのがいけないのか、タイトルが無駄に長いのがいけなかったのかわかりませんが、とにかくあともう
ちょっと頑張って賞をあげたいボンクラ映画でした。
どうか心を広くもって観てあげてください(笑)


NETFLIXにて